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日蓮大聖人・池田大作

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海――開かれた人間の心のみが大自然を生…  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

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1  「海洋国日本」ということが、ふたたび脚光を浴びはじめている。かつて、戦時中の「海洋国日本」には、多分に軍事戦略的意味が強く、暗い印象だった。しかし、今日では、太平洋文化圏としての位置と、海洋開発という未来の可能性を示唆する方向が出ていることは、明るい話題といえよう。だが、これも舵の取り方ひとつにかかっていると思う。
 「二十世紀は大西洋、すなわち米国と欧州が支配してきた。二十一世紀は太平洋の時代となろう」と予言したのは、TVA(テネシー渓谷開発公社)計画の責任者のD・E・リリエンソールであった。「太平洋時代」といっても、アメリカ中心の大国主義思想のあらわれであることに変わりはないが、太平洋圏の豊富な資源と、広大な市場を計算に入れた卓抜な発想である。たしかに一つの見方であるといえよう。
 先ごろ帰国したクーデンホーフ・カレルギー伯(哲学者。汎ヨーロッパ主義の平和運動家)が、日本は世界平和樹立の旗手であり、二十一世紀への、太平洋文明の主役であるべきだ。経済大国だけでなく、偉大な平和への思想と、文化の輸出国たれと強調していたが、まったく同感である。わが国の進路が、エコノミック・アニマルそのままの経済大国にのみ終始するか、すぐれた理念と英知をもつ平和文化へのオピニオン・リーダーとなるか、二十一世紀への分岐点ともいえると私は思う。
 太平洋圏は「北」から「南」までをすべて包含している。いわゆる貧困と疾病に悩み、戦火の脅威にさらされている開発途上地域を、ともどもに繁栄しうる太平洋文化圏に構築しうるならば、それはまったく新しい人類文化の総体的な前進であり、かつてない雄大な平和圏、文明圏の現出となるであろう。
 地球の七割を占める海――この膨大なる資源の宝庫は、地上の貧困を埋めて、なお余りあるものであろう。魚類や海藻などの水産資源ばかりではない。大陸ダナに秘められた豊富な地下資源の開発等、現代の科学技術の発達が、そのまま、明日への人類の課題に向けられたとき、どれほどの価値と喜びを生ずることであろうか。
 海は、こうした大自然の宝をそのままに大きく地表を包んでいる。それは、太古より世界の人々を結びつける不思議な役割も果たしてきた。開かれた人間の心のみが、この海を生かすことができるのであるということを、しばし正月の静かな日に考えてほしいのだ。とくに、未来の人生を進む人たちは。

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