Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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旅人――東海道線の車中で詠んだ“歓喜”…  

「わたしの随想集」「私の人生随想」「きのう きょう」(池田大作全集第19…

前後
1  私には、関西に友人が多い。江戸っ子育ちの少年には、いつしか憧れにも似たものが関西に芽生えていったようだ。それは王朝文化の薫り高い歴史の都であり、日本経済をリードしてきた不死鳥のごとき商人の都である。“静と動”とを内包した、まったく対照的な舞台の関西に魅力があったのかもしれない。
 友人の一人が言った。今秋の訪問で来阪の回数が六十七回となったと。今では、第二の故郷とさえ思っている。
 初めて私が関西に旅をしたのは、昭和二十七年八月十五日であった。ちょうど、七回目の終戦記念日である。二十四歳の青年であった。特急“つばめ”にただ一人乗って、夕暮れちかい大阪駅に着いたのである。京都の東寺の五重塔の印象、淀川の鉄橋付近からの黒色にくすむ、威容誇る大阪城は、青年の目に焼き付き、今でもその映像が消えない。
 すべての日程を終えて、ふたたび雑踏のなかの大阪駅をあとにした。いまだ敗戦の匂いが濃い。その人の波とともに車中の人となる。そのときの拙い詩である。
  旅人は征く 今日も明日も
  新しき 幸の道を求めて
  
  その心 われ知らず
  悲しみの 荷物を持ちてか
  喜びの 包みを持ちてか
  
  寒き朝も 暑き夕も
  生きぬくために 旅人は流れゆく
  生活の錘を抱き 波におされて
  
  旅人はつきない いずこより来り
  いずこに 還りゆかなん
  悲劇の旅より 希望の路に
  
  牧水は謳った
   幾山河 越えさり行かば 寂しさの 
   はてなむ国ぞ 今日も旅ゆく 
  
  夢ある社会
  幸咲く園
  民主の舞台
  詩劇の舞
  的確なる指標
  主役の登場
  
  旅人よ行け われも征く
  人間無限の旅路
  怒りの道より歓喜の道へ

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