Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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倫理感について  

「私はこう思う」「私の人生観」「私の提言」(池田大作全集第18巻)

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3  こうした現状に対して、私の最も訴えたいことは、この“人間としての資質”を育てる基盤となってきたキリスト教の愛や儒教の仁、仏教の慈悲といった理念が、ふたたび現状を改革するだけの力と生命をもちうるかどうか。それを今一度、深く考えてみることが問題のカギとなろう、ということである。
 私自身、仏法を求める者として、仏教の慈悲という理念に、最も深い関心をいだいていることは言うまでもない。しかし、だからといって、キリスト教の愛や儒教の仁などの理念の価値を貶めるつもりは毛頭ない。少なくとも、それらの教えが人々の精神生活を支えていた社会にあっては、これらの理念は、人格形成の豊かな土壌をつくることに大きな役割を果たしてきたからである。問題は、その教えが、かつてと同じように、今なお人々の心を引きつける力をもつことができるかどうかにかかっている。ここに宗教の復権という新しい論題が立ち現れてくるが、この問題については、今ここではふれない。
 いずれにせよ、政治の基本が人間の精神に深くかかわるものである以上、人間精神の深奥の問題に対する理解なくしては、問題の有効にして正当な解決はありえないことを再認識する必要があろう。
 なお、言うまでもなく、宗教の問題は、あくまで精神の内面の次元に関することであって、政治の表面で争われるべき問題ではない。つまり、宗教の問題はあくまで人間性の根底にかかわるものであり、政治の場における具体的な問題に、なんらの媒介もなく直接的に結びついてくるものではないということだ。それだけ、この新しい宗教は、人の心をとらえうる力ある宗教でなければならないことを付言しておきたい。

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