Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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生命の環  

「私はこう思う」「私の人生観」「私の提言」(池田大作全集第18巻)

前後
4  田園の情緒をいろどった蛍やトンボ、蛙やメダカなどといった小動物は、農薬の普及につれてみるみる姿を消してしまった。そればかりか、その薬の中に含まれていた劇毒は、作物のなかに沈潜して人体に入りこんでいく恐れさえある。
 この難題を解くために、科学者たちは化学薬品でなく、天敵による病虫害駆除の方法を考えはじめている。もちろん、それには退治すべき病虫以外への影響も、十分に考えねばならないであろう。ただ、考え方の志向としては、私は正しいと思っている。それはとりもなおさず、自然界を組みあげている“生命の環”に着目した、いわば東洋の伝統的な発想といえよう。
 すでにこうした考え方は、医学の分野でも、若干、取り入れられており、たとえば化膿菌を殺すのに、一種のカビを応用してペニシリンが発明されたこともその一つである。また、伝染病の予防のため、あらかじめ少量の菌を人体に注入し、その菌に対する抵抗力を与えるというのも、そうだ。
 自然の開発にせよ、人体の健康にせよ、これからは、自然のリズムをいかに巧みにとらえ、それを活用していくかが、より重要な課題となっていくにちがいない。自然は、決して静止した“死”の世界ではない。生命の充満した巨大な有機的連合体なのだ。人間もまたその一つの環にすぎない。
 その“生命の環”としての自己を再認識したときに、宇宙生命の大海原と一体化した“新しい生命感”がわきあがってくるはずである。私は二十一世紀は、こうした生命観に立った、“生命の世紀”でなくてはならないと主張しておきたい。
 人間の真の幸福は、その基盤の上に――初めて樹立されていくのではあるまいか。

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