Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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人生と幸福  

「私はこう思う」「私の人生観」「私の提言」(池田大作全集第18巻)

前後
3  では、崩れることのない、本当の幸福の条件は何か。
 その第一に挙げられることは、あくまでも主体的に、積極的に、人生の問題に取り組んでいく生命自体の姿勢である。客観的状況のみに支配され、受動的に運命を考えるのではなく、どこまでも、主体的に、自分の力を、そうした状況や運命にぶつけて、少しでも切り開いていこうとする意欲である。
 そうした積極的な生命の姿勢は、およそ生命体ならすべてのものがもっている特質といってよい。特に植物より動物、動物のなかでも進化の度の高い動物ほど、この傾向は強い。人間が、万物の霊長であるというのも、この特質を最も強くそなえているからではあるまいか。
 とすれば、人間は、いかに不利な条件に直面しても、つねに主体的に、積極的に、これと取り組み、挑戦していくべきだと思う。これが人間生命の本然的な特質であり、特権だからである。そして、人生において味わうことのできる最高の幸福が、そこにあるからである。
 幸福は、決して山のかなたにはない。自己自身の内にある。しかし、座して安閑としている自分ではなく、あくまで、かなたにあるものをめざして、険しい尾根に挑戦し、障害を一歩一歩、克服してすすんでいる“戦う自分”の生命の躍動の内にあるのだ。
 幸福の条件の第二は、英知である。
 いかに意欲に満ち――前進また前進をしていっても、英知の灯火を失っては、闇中の遠征になってしまう。古代ギリシャの哲人の格言に「人間は、みな幸福を求むるも、幸福とは、宇宙および人間の指導原理たる理性にしたがいて生くることなり」というのがある。
 この場合、宇宙とは自然界、物理的・科学的現象界と言いかえていいだろう。人間とは、人間社会の、心理的、精神的世界といえる。これらの世界を動かしている法則、原理を正しく認識せずしては、幸福実現はできないということである。
 高山を征服しようという意欲はあっても、登山の技術をもたなければ、暴挙にすぎなくなってしまう。それと同じく、人生のあらゆる障害も、それを克服するには、どうすれば、最も確実に、価値的に目的を達成できるかを知らなければなるまい。
 この哲人の言う、“宇宙および人間の指導原理”が何なのか――彼は、それをただ理性といっているだけだが、その当体は何か、それを究めることが人類の最大の課題といえよう。

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