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日蓮大聖人・池田大作

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母の慈愛  

「私はこう思う」「私の人生観」「私の提言」(池田大作全集第18巻)

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4  実に、生活における伝統という基盤から家庭を考えるとき、なんらかのかたちの承継として、もう少し生かすことに、意を使うべきではないかと思う。親からの遺産は、何も財産ばかりとはかぎらない。優れた生活文化もまた、その民族にとって、大きな遺産であるべきだ。よって多くの経験と年月を経て、生き残った習慣のなかには、生活として多くの美点を含んでいる。新しい文化はつねに、伝統の上に築かれていくからである。
 姑が嫁に教える野菜の煮つけ方や、漬けものの作り方に、かつては、その家庭独特の経済的な栄養学があり、ほのぼのとした家庭の雰囲気がつちかわれてきた。明治の母親たちのにおいは、そのぬかみそくさい手の中にあったともいえよう。節約は主婦の手数で補われ、それが土のにおいのする温かい家庭環境であったのである。
 ところが、最近は、たくあんから総菜にいたるまで、出来合いのビニール袋入りである。いかにも合理的であり、近代化された家庭生活とはいえても、何をもって家庭生活の環境づくりとし、母親としての愛情の表現としようとするのか。大いに考えねばならぬ点もあると思われる。
 このような母親の喪失がそのまま人間性の喪失に通ずるものであることを憂えるのは、私一人ではあるまい。

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