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日蓮大聖人・池田大作

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広島で考えたことども 池田大作  

「四季の雁書」井上靖(池田大作全集第17巻)

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7  私事になりますが、明年の正月二日は、私の四十八歳の誕生日になります。いつのまにか昭和三年辰年生まれの私が、五回目の私の年を迎えることになりました。私も私なりに生涯青春の、精神の若々しさだけは失いたくないと、しみじみ思っております。
 十二支でいう「辰」の字の古形は、龍の星座の形をしており、龍を意味するそうです。十二支のなかで、龍だけが架空の動物ですが、それだけに古来から、人間の想像のなかでロマンに満ちた説話が伝えられています。有名な「龍門」は、今の中国山西省西部の、汾水ふんすいが黄河に注ぐあたりと言われていますが、川底の断層のため、逆巻く激流となっています。この難所を泳ぎ登る魚は非常に稀で、これを登り切ると、神通力を得て龍となるというのですが、干支えとというものにまつわる話はなかなか面白いものだと思います。
 辰を一日に配しますと、ちょうど午前八時頃の時間にあたりますが、私はその時間の太陽の無限の迫力を秘めて中天に昇ろうとする姿が好きです。干支というもの自体は、俗信に類するものであり、それにとらわれているのは愚かなことですが、人生の一つの節として、生まれ年を祝う習慣というのは、それなりに意味あることに思います。ともあれ、私は昇龍のように、また太陽のように、勢いのいい、つねに生命のバネを失わない人生の生き方でありたいと思っています。
 多忙のなかで、思いの走るままに筆を執らせて戴きましたので、読み返してみて趣旨のよくいたらないところが多く、恐縮に存じます。御容赦下さいますように。
 一九七五年十一月十七日

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