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日蓮大聖人・池田大作

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作品に見る民衆像  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

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14  このような自分の民衆観に照らして、私は、“あなたのエジゲイ”に、心からの親愛のエールを送りたいと思います。彼こそ民衆の王者です。
 あなたは、エジゲイについて力説していますが、エジゲイの言葉の紹介がないので、『一世紀より長い一日』の読者でない人には、わかりにくいでしょう。そこで、私が、エジゲイの最も印象的な言葉を代わりに引いておきましょう。カザンガップ老人を埋葬したあと、エジゲイが、一人で「神」に語りかけるくだりの独白です。
 「おれはあんたが存在するということを、おれの心のなかに存在するということを信じたい。おれはあんたにお祈りをするときは、実際はあんたを通じて自分自身に語りかけている。その時のおれは、造物主であるあんたがおそらく考えるであろうように考えることができる。そのことが肝心かなめなのだ。ところが若い連中はそこのところがわからなくて、お祈りを軽蔑している」(前掲書)と。
 精神を健康に保つためには、おそらく不可欠であるはずの祈りというものへの、まことにエジゲイらしい、剛毅で真摯な問いかけと言ってよいでしょう。
 そして、傲慢な無神論が犯してきた最も大きな罪は、このような健全な民衆を、愚昧の二字で切り捨ててきた点にあります。今の旧ソ連社会を覆う精神的荒廃は、そのツケが、一挙に回ってきた結果なのです。
 プルードン
 一八〇九年―六五年。フランスの社会思想家。その無政府主義は大きな影響を与えた。「知識人は…」は、「人間、それ自らに背くもの」小島威彦訳、『マルセル著作集6 人間、この問われるもの』所収、春秋社を参照。

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