Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

敬愛する友、アイトマートフ大兄  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

前後
6  最後に「主権国家という従来の概念が急速に意味を失い、国境の壁が過去のものとなりつつある時代においては、まさに芸術文化こそが民族の独自性を担う主体者」とのあなたの言葉は、芸術文化への過大評価どころか、優れた文学者にふさわしい、誇り高い表白です。そこにおいてこそ、民族のエネルギーは、血で血を洗うヴァンダリズム(破壊行為)と決別し、独自の精神性の昇華した、かけがえのない“形”をとっているからです。
 ここで私たちはあらためて“文化相対主義の功績”について光を当てるべきではないでしょうか。
 いうまでもなく、「文化相対主義」とは、近代ヨーロッパ的な価値観にもとづく文化を絶対的で普遍的なものであるとする進歩史観を斥け、相対化し、欧米以外の世界の文化にも同等の価値があるとするもので、とくに第一次世界大戦以降、欧米中心の一元的世界観が崩れ、加えて、文化人類学などの先駆的業績が明らかにしてきた今世紀の大きな流れであります。
 二十世紀は「子ども」「無意識」と並んで「野蛮」を発見したとされるのも、従来「文明」に対して「野蛮」と貶下されてきた文化がじつは、独自の価値をもつことを見いだしてきた、いうなれば、歴史に対する正視眼ともいうべきものが、そこに働いているからであります。
 近代の行き詰まりや植民地主義への反省から、今世紀になって生まれてきた、欧米以外の文化にも対等の価値を見いだそうという「文化相対主義」は、ヨーロッパの知性の自浄能力、内省の力を示す、良識の帰結であったとも言えましょう。
 今は、ヴァンダリズムの嵐が吹き荒れているようなソ連の各共和国にあっても、わずかでもロシアの大地に息づく文化にふれたことのある一人として、その民族独自の高貴な精神性が秘められていることを、私は信じてやみません。大兄も、そうした民族の美質については、よくご存じのはずです。
 コント
 一七九八年―一八五七年。フランスの哲学者。社会学の祖。人間の知識には神学的―形而上学的―実証的の三段階の進歩があるとした。
 ヘーゲル
 一七七〇年―一八三一年。ドイツの哲学者。宇宙的理性が弁証法的に発展するという世界観を説いた。
 S・ダスグプタ
 一八八五年―一九五二年。インドの哲学者、インド学者。
 J・ガルトゥング
 一九三〇年―。ノルウェーの社会学者、平和学者。オスロ国際平和研究所を創設。平和学の世界的権威。創価大学名誉博士。
 コーデル・ハル
 一八七一年―一九五五年。
 ルイ十四世
 一六三八年―一七一五年。絶対王政の絶頂を極め、ベルサイユ宮殿を造営。

1
6