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日蓮大聖人・池田大作

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ロシア革命観をめぐって  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

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5  池田 『人間的な、あまりに人間的な』の中の一節ですね。たしかに、社会主義的な国家や権力の悪に対する驚くべき洞察です。『国家と革命』におけるレーニンの予見とは裏腹に、社会主義社会における国家・権力は、「死滅」どころか「肥大化」する一方であったことは、ニーチェの洞察の先見性を見事に証明するものです。
 私は、なぜそのような洞察がもたらされたかについて、“神の死”を宣告した哲学者ならではの、ヨーロッパ近代の宿命であった無神論というものへの把握の深さがあったからだと思います。神なき時代にあって、社会主義イデオロギーなどが、メシア的色彩を帯びて立ち現れると、つねに「意味」に飢え、渇望している人間・個人にとって、どのような運命が待ち受けているかについての――。
 ちなみに、これはドストエフスキーにとって、社会主義とは第一義的に無神論の問題であったことと、同じ質の深さをもった問題です。その洞察の深さゆえに、ドストエフスキーは『悪霊』が典型的に示しているように、社会主義の未来について驚くほど的確に予見することが可能となったのです。そこに“ロシア革命の鏡としてのトルストイ”を超えて“ロシア革命の予言者としてのドストエフスキー”と言われるのも、ゆえなきことではありません。ニーチェが『悪霊』のキリーロフに、異常なまでの興味と親近感をもっていたことは、日本でもよく知られています。

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