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日蓮大聖人・池田大作

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調和ある民族の統合  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

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7  池田 私は、偏狭でファナティック(狂信的)な民族意識を変革していく上で、いちばんカギを握っているのは、おそらく教育であると思っています。私どもは、世界の教科書展や、小中学生の交流、子どもたちの絵画展、ユニセフ展など、子どもたちの世界を広げるためのさまざまな企画を催してきておりますが、それらをとおして痛感することは、子どもたちが生来のコスモポリタンであるということです。彼ら彼女らの笑顔はじつに屈託なく、心広々と、すべてにわたって開放的です。
 そうした子どもたちが、長ずるにしたがって、偏狭なナショナリストへと変貌を遂げていくのは、じつに悲しいことであり、教育それも学校教育にかぎらず、社会や家庭をも含む教育環境に、重大な欠陥があったからなのです。私はそう確信しています。
 N・カズンズ氏も、このことを繰り返し強調していました。「単にアメリカだけでなく、世界の大部分における教育の大きな失敗は、教育が人々に人類意識ではなくて、部族意識を持たせてしまったことである」(前掲『人間の選択 自伝的覚え書き』)と。
 今後の世界では“国家主義”よりも“人類主義”、“国益”よりも“人類益”を志向するグローバリズムが不可欠ですが、それにはカズンズ氏の言う「人類意識」をどう育てていくかが最大の課題となってきます。今まで教育者は、事の重大性にもかかわらず、あまりにこのことに無関心すぎたのです。
 部族意識や民族意識ということは、今年(一九九一年)の六月、哲人政治家として知られるドイツのヴァイツゼッカー大統領とお会いしたときも、重要なテーマとなりました。ドイツも日本も、さして遠くない過去に、思い上がった狂信的なナショナリズムに引きずられ、破滅の道を転がり落ちた悲劇的な体験をもっているだけに、相互に「開かれた」社会でなければならないという点で、深く同意しました。
 大統領は「世界的に平和に寄与されているSGI(=創価学会インタナショナル)の皆さんが、その活動を通じ、地球的規模でそれぞれの地域を『開かれた』ものにしていくべく貢献されんことを、心から期待してやみません」(「聖教新聞」一九九一年六月十四日付)と述べておられましたが、それはまた、私の深く期しているところでもあります。
 真実の宗教つまり世界宗教とは、そうした教育運動と連動し、それを支えるものでなければならないでしょう。
 ユニセフ
 国連児童基金。発展途上国の児童の援助を行う。
 ヴァイツゼッカー
 一九二〇年―。元西ドイツ大統領、九〇年~九四年に統一ドイツの初代大統領。ナチス・ドイツの蛮行に対する深い反省を表明する演説は世界に感銘を与えた。

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