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日蓮大聖人・池田大作

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母の印象  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

前後
2  アイトマートフ 以前そのことについて私は中編『母なる大地』の中で書きました。現在の基準からすれば、あの物語はいくらか感傷的にすぎるように見えますが、しかし、あれは母について語りたいという純粋な魂のほとばしりによるものです。母のイメージにたとえ一筆でもいいから付け加えたかったのです。
 たしかに、献身的で没我的な母の愛情の例は無数にあります。それはあらゆる時代の、あらゆる民族の文学でたたえられています。
 母の姿は偉大です。
 それだけに、現代社会の最も深刻な悲劇についても黙っていることはできません。時折、新聞で、お産をした女性がわが子を捨てたり、産院から逃げ出したり、もっと悪いことには、口にするのもはばかられるのですが、赤子を殺したりする記事を読んで戦慄をおぼえることがあります。
 例外的な出来事なのでしょうか? それとも社会的病の兆候なのでしょうか? いずれにしてもその種の事実を偶然的なものと見なすことはできません。意ならずも考えざるを得ません。「種の保存」という本能が弱まり失われていく原因はどこにあるのだろうか、と。それゆえに、生活の苦しさにもかかわらず、子どもを育み、自分の子どもたちのために、つまり、未来のために自分のすべてを捧げようとしている女性を、母親を賛美することが、いっそう重要だと私は思います。
 私にとって私の母のイメージは神聖です。母は優しい愛、誠実さ、勇気を体現していました。私の作品に登場する女性のもつ優れた特質は、すべて母がもっていたものです。

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