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日蓮大聖人・池田大作

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最も難しい勝利、それは自分に勝つこと!…  

「大いなる魂の詩」チンギス・アイトマートフ(池田大作全集第15巻)

前後
16  そして最後に、私の手紙は「最も難しい勝利、それは自分に勝つこと!!」と題しました。このような題をつけたのは、人間は、自己自身と向かい合ったとき、歴史の前にみずからの責務を問うときが最終審判の下るときであると考えたからなのです。社会といっても突き詰めていくならば個の集合体であるがゆえに、自身への問いかけは根本的意味をもっているのではないでしょうか。ここで言う個とは、社会的意識の当体として重要なのです。したがって、個という原点の善し悪しによって、社会の顔立ちも決まってしまうと言えましょう。わが国にかくも長期にわたって君臨した全体主義の悪は、とりもなおさず、人間の自由と権利を否定して、人間の人格を完全に踏みにじり、人間を党、国家、そしてイデオロギーとユートピア思想に服従させたことにあります。
 しかし、ネオスターリニストに対する民主勢力の八月勝利は新しき世紀の扉を開き、社会と国家が、そして何よりも一人一人の人間が、ひいては民族全体が、今までとは質的に異なる状態に踏みだしたのだと思います。
 時は到来し、歴史の審判は下ったと言ってよいでしょう。民主主義が生活形態の主流となり、ますます現代生活の根幹を成していくようになるでありましょう。民主主義がにわかに現実となったのです。しかしはたして、わが国に生きる私たち一人一人は、過去から受け継いだものを自身の中で克服することができるでしょうか。それは、つまり、幾世紀にもわたってはびこった私たちのエゴイズムであり、そのエゴイズムは社会主義によって偽善と偽りに変貌してあたりまえのように遍満し、さらに希望を閉ざされた暗澹たる他力本願と仕事に対する無気力となって人々を蝕んだのです。それらに打ち勝つことができるでしょうか? 文化と社会の堕落と退廃をもたらしたすべての悪しきものを、自己自身の中において克服することができるでしょうか……。
 はたして、労働と学術の成果を人間自身の豊かさに供し、みずからの心の捕虜となっている自身を解放し、そしてついには、世界制覇というナンセンスな理想を投げ捨て、軍産独占支配を抜け出すことができるのでしょうか……。
 私は、自己自身に打ち勝つことができるか、廃墟から立ち上がることは可能か、との危惧をいだくゆえに、この苦い言葉を口にしております……。
 地政学
 国家の政治的変化・発展を地理的条件との関係からとらえる学問。
 モスクワ
 ロシア連邦、旧ソ連邦の首都。
 八月クーデター
 一九九一年八月十九日、ペレストロイカに反対して保守派が起こしたクーデター。ゴルバチョフ大統領を監禁したが、市民が反クーデターに立ち上がり、クーデターは失敗、共産党が解散した。
 ネオスターリニスト
 スターリンは一八七九年―一九五三年。旧ソ連の政治家。一九四一年に人民委員会議長(首相)。死後、その粛清を伴う専制的政治はスターリン主義として批判された。その後の反民主的なスターリン主義的な動きをする者をネオ(新)スターリニストという。
 マルクス・レーニン主義
 マルクス主義はマルクスとエンゲルスによって作られた、資本主義が必然的に社会主義に移行し、プロレタリアートが解放されるという思想体系。帝国主義やプロレタリア独裁について考察したレーニンの学説がマルクス主義を継承するものであるという立場をマルクス・レーニン主義という。
 ソ連
 ソビエト社会主義共和国連邦。一九一七年に革命によって成立したが、九一年に解体。
 カティン
 ソ連軍の捕虜となったポーランド軍将校約八千人の大部分が、一九四三年四月、スモレンスク郊外のカティンの森で殺害された。
 KGB
 旧ソ連の国家保安委員会。
 エジョフ
 一八九五年―一九四〇年。
 アバリーヌィ・スエズド
 非常道路。急な坂道を下るさい、ブレーキをかけきれなかったときに、脇にそれて車を止めるための道路。
 亜大陸
 大陸の一部、あるいは大陸よりは小さいが、ほぼ大陸としての諸条件をもっている地。インド亜大陸、グリーンランドなど。
 現在ユーゴスラビアで……
 第二次大戦後、多種の民族によって構成されたユーゴスラビア連邦は、冷戦構造の崩壊とともに民族独立が活発となる内戦状態におちいった。
 第二の一千年の締めくくり
 キリスト教では、再来したキリストのもと、地上に一千年間にわたる平和の王国が建設され、その最後に裁判が下るとされる。それになぞらえて、二十世紀の終りは、第二の一千年の締めくくり期になる。

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