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日蓮大聖人・池田大作

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第五章 仏法と宇宙と人生と①…  

「宇宙と仏法を語る」(池田大作全集第10巻)

前後
13  星辰と語り合うような人生を
 ―― 釈迦仏法の小乗教では、「須弥山」を中心とした宇宙観というより世界観があるというとらえ方になっていますね。
 池田 そうです。
 いまから千五百年前にインドに世親という学僧がいた。そして小乗教を修行していたころ、『倶舎論』という本をまとめたのですが。
 ―― それは先日、『哲学事典』(平凡社刊)を見ましたら、仏教入門の説とありましたが。
 池田 その程度のレベルといっていいでしょう。
 この『倶舎論』のなかに「分別世品」という章がある。ここで説かれる宇宙観は、古代インドのものを反映した内容になっています。
 木口 世親という人は、どういう人ですか。
 池田 四世紀か五世紀のころ、インドで活躍した僧であったことは事実のようです。たいへん広い分野の知識に通じていましたが、仏教では小乗教をとくに深めていたようです。
 のちになって、兄の無著に説得されて、小乗教に固執していた非を悔い、舌を切ろうとする。だが、再び兄に諭され、大乗教の布教に立ち上がる、という有名な説話が残されています。
 ―― 仏教の入門書のような『倶舎論』で説く宇宙論などでも、「仏教の宇宙観は近代の科学的宇宙観と驚くほど似ていることがわかる」「二千年前の言語を現代語に翻訳したら、現代の宇宙観にほぼ遠からぬものができるのではないか」(『須弥山と極楽』定方晟著、講談社刊)と指摘する学者もいますが。
 池田 表現などには、抽象的なところもありますが、そのようなとらえ方は、正しいといえるでしょう。
 ともかく、私どもは星降る天空を仰ぎ見て、星辰と語り合うような、おおらかな人生でありたいものですね。
 ―― 名誉会長の『若き日の日記』を拝見しますと、青春のころから、そうした考え方が一貫していますね。
 木口 私もそう思います。いま時代の趨勢も、その方向に向かっているのは確実ですね。現代文明を覚醒させるチャンスでしょう。
 ―― 先日も、桜井邦朋博士が「自然が織りなす天空の交響楽ともいうべき星のまたたきを、もっと現代人は身近にすべきだ」と述べていました。
 池田 なるほど、「ひからびた知識よりも、まず自然のなかに包みこまれることを経験することのほうが、いまでは大切なのだ」という見識は、私も同感ですね。
 木口 桜井博士は、私の先輩にあたりますが……。
 ―― そうですか。
 木口 アメリカ科学アカデミーに招かれて、NASA(米航空宇宙局)で長く研究生活をつづけてこられました。
 池田 木口さんも、立派な先輩に恵まれていますね。
 木口 おかげさまで、先輩にだけは……。(笑い)
 池田 いやいや、木口博士も前途洋々です。
 木口 ご期待に背かぬよう頑張ります。

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