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日蓮大聖人・池田大作

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伝統と近代化  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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5  ログノフ ロシア語のミールについてのあなたの語源論的分析はきわめて興味深いといえましょう。事実、この言葉は、たとえば、英語のワールドおよびピースの概念をあわせもっています。十九世紀の一部の著者が叙述した農村共同体という現象はすでにだいぶ前から存在しませんが、ロシア語としては、人々の一定の共同性、なかんずく勤労上の共同性を意味するミールの概念が今なお生きつづけています。ロシア人は今もなお、「ミール的に、つまり、一緒に、共同して、集団的に作業しよう」という表現を使います。
 ロシア語にはミロエードという、もう一つおもしろい言葉もあります。この言葉の語源も同じくミールです。ミロエードとは、ミールつまり勤労者の共同体に敵意をもち、自分は労せず、他人の労働に寄食する人間のことなのです。勤労生活、共同生活を伝統的に尊ぶ風潮、前述のミロエードに対する嫌悪感は、今のソ連にもそのまま受け継がれただけでなく、新しい社会主義的内容を付け加えました。なぜならば、それは、人間の尊厳の判断基準は労働であるという私たちの社会の基本原則と合致するからです。
 ところで、あなたは訪ソの印象を簡単に特徴づけて、「私は貴国において人々の生活意欲を感じ取った」と書いておられますが、それは、私の理解するところ、労働と直接結びついていると思います。
 誠実に働く人間の印象、善良な勤労者の印象は、十九世紀ロシア文学の優れた作家にとってそうであったと同様、今日、ソ連の人々にとっても大切なものとして保持されています。新しい社会主義的内容を加えた善、労働、共同体の伝統は、ソ連の兄弟的諸民族の団結した家庭において神聖に保たれ、さらに発展をつづけています。

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