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日蓮大聖人・池田大作

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ソ連における東洋と西洋  

「第三の虹の橋」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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15  池田 そのように一つの目的のもとに、一つのソビエト国民として、協力し合っていくためには言葉が通じ合うことが必要不可欠でしょう。ソビエト連邦を構成する多数の共和国は、言葉もそれぞれに違っているわけですから、この問題を乗り越えることは容易ではないと思うのですが、どのようにして取り組まれているのでしょうか。
 ログノフ モスクワ大学総長という私の職責は教育事業にかかわりをもっていますので、ここでもう一つ複雑な課題の首尾よい解決を物語るある問題にふれたいと思います。
 周知のように、ソ連邦は、単一の国語の国ではありません。それぞれの共和国の立法機関や執行機関(行政機関)はその業務において民族語を使っております。わが国の憲法は基本的人権の一つとして各人が母国語で学ぶ権利を保障しています。しかし生活は生活です。生活は必然的に人々が何か一つの言語で交流する必要性を教えます。たとえば、ダゲスタン(コーカサスの一自治共和国)には百五十万の人々が住んでおり、彼らは二十七の言語と七十の方言を使っていますが、人々は必要な場合、お互いにロシア語を使ってうまく相互の意思を疎通させています。こうした目的のため、ロシア語はいわゆる“第二言語”として諸民族の学校で四年クラスから教えられているのです。初等教育はどこでも母国語で授業が行われます。
 ソ連はロシア語を使ってすべてのソビエト人をロシア化しようともくろんでいるといった声が西側でよく聞かれますが、これは正しくありません。わが国では六百三十ある劇場の出し物は五十の言葉で上演されています。モスクワのトベルスキーブリワにはやがて国立「民族友好」劇場が開かれますが、この劇場の舞台では、ソ連邦に住むいろいろな民族劇団が公演するようになります。書籍は八十九の言葉で出版されています。たとえば、ラトビアで一九四〇年に出版された書籍数は二百九十万部でしたが、一九八五年には千七百三十万部を数え、新聞発行部数は同じ時期に三千三百七十万部から三億四千百万部に増えました。しかも、この出版物は主としてラトビア語によるものです。エストニア共和国は住民一人当たりの書籍出版で年十二冊という世界最高の数字を示しています。出版総数千七百三十万冊のうち、千二百二十万冊はエストニア語で出版されています。
 ソビエト社会の文化的発展は少なからず諸民族文化の接近とその全面的発展の結果、達成されたものです。なぜならば、文化の宝庫へのそれぞれの寄与は、それを行うのが多数民族か、少数民族かに関係なく、このうえなく重要であり、貴重だからです。それは二度と繰り返されるものでなく、独特のものです。そこには、一つ一つの民族の過去の一切の体験、当該民族の精神的な財産のすべてが内に秘められているのです。

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