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日蓮大聖人・池田大作

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芸術と文字――東洋  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

前後
25  すでにみましたように、東洋の文字は情動的な意味合いを担っています。それは、絵画において、画筆のひとはけが語りかけるのと同じように、人の心に語りかけるといえます。
 それは読者の抽象的な知覚の仕方にばかり語りかけるのではありません。なぜなら、東洋の文字は観念を浮かびあがらせると同時に、それ自体一つのイメージであり、表情豊かな、そして象徴性を帯びたイメージであるからです。そのため、読む人は、さらにひきつけられ、たんに抽象的思考のうえばかりでなく、その内面的生命の全体で、そこに参画させられるのです。
 彼は感受性をもって読み、その文字の書き方によって感情を呼びさまされ、そのもつ象徴によって心を揺り動かされます。もちろん同時に、理性的思考によって読み、その文字のもつ抽象的な意味を認識するわけですが。
 ですから、東洋の文字は、西洋の文字よりもはるかに難解であり、非実用的な面があるわけですが、はるかに偉大な人間的豊かさがあります。
 私の見解は、あなたとまったく同じです。この文字の問題に取り組むことは、東洋世界と西洋世界とのあいだにある、精神的あり方の違い、つまり思考法の違いだけでなく、その思想をどう生き、実践するかという本質的な違いをとらえる、最も直接的な手段の一つなのです。

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