Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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欲望と憧憬  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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11  ユイグ こうして、人間について引き出そうとしている概念がこの私たちの対話をとおして、明確になってきたわけですが、必要なことは、完全な人間、全体的な人間をめざすことです。それを私は、歴史的な意味においてでなく、最も広い意味で、ヒューマニズムと呼びましょう。そして、この完全な人間とは、三頭立ての馬車になぞらえられます。一頭は感受性であり、それは外界の現実が感覚によって私たちに送ってくるメッセージの受容です。また、そこにはこれらのメッセージに対する反応や、無意識の深みから上ってくる深い憧憬といったものの自覚も含まれます。
 第二の駿馬は知性すなわち、これら内外のメッセージの重要性を意識し、それを明快に理解し、論理的に構築でき、概念として表現できる能力です。それに対し、第三の駿馬は意志であり、つまり、私たちの内に生じ、責任感によって鞭でせかれる憧憬に私たちを服従させようとするさまざまな呼び声の中から、自由に選択する能力がこれです。
 これら三つの力の組み合わせによって、人間は完全に自らの能力と自分の運命との所有者になることができるのです。運命は、一面では受け入れられるものです。しかし、それはある種の人びとが信じているように、ただ従う以外にないというものではなく、一面では、芸術作品のやり方で創造されるものです。そこに、人間のもつ最も偉大な高貴さがあります。

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