Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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逃避の反射作用  

「闇は暁を求めて」ルネ・ユイグ(池田大作全集第5巻)

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2  さて、この逃避について注目しなければならないのは、それがいかなる方角へ向かってなされるか、です。人びとはバカンスになると、技術文明の発達によって、より侵されていない地方へと出かけます。まず人気の的になったのがスペインであり、現在はトルコであり、さらにカリブ海です。これらは、こうした人びとの殺到によって経済的発展を勝ち取っていますが、そのことがやがてしだいに旅行者たちを失望させることになるでしょう。
 人びとはまた、過去の遺物を求めて現代世界から逃避します。とくにフランスでは、若い人たちは考古学的発掘のため無報酬の作業班を組むこともありますが、これは過ぎ去った時代に対する並々ならぬ関心が新しい風潮として高まっている証拠です。人びとは、自然へ、非工業的なものへと向かっていくのです。
 ヒッピー運動もまた社会参加ではなく、一つの逃避現象です。そこにはまず、各人の所得の増大が支出の増大を促進するように仕組まれている消費社会、この現実生活からの組織的な拒絶がふくまれています。ヒッピーはこのような仕組みを拒んでいるのです。彼らは、しばしば原始人にみられるような服装さえして、自らを社会から区別します。この都会的慣習との攻撃的な断絶が強調している撤退と別離は、規則と規律への挑発的な拒絶でもあります。
3  しかし、この現象はまた、無視できない知的影響力をもっています。ヒッピー運動は、それがただのものまねにおちいらないときは、インドの哲学、禁欲と空の哲学に関心をもっています。この西洋思想の拒否と、時間・空間ともに遠い源をもっている東洋思想の探究、実務的で利害一辺倒の行動を否定し、存在を〈空〉とみるこの思想への傾倒――これもまた、一つの逃避の現象です。だが、この逃避も極端で過激になると、人工的な麻薬による夢に頼るようになります。この増大する荒廃は、現代の世界の放棄と忘却という破滅的な反動の兆候以外のなにものでもありません。

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