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科学と宗教の新しい関係  

「人間革命と人間の条件」アンドレ・マルロー(池田大作全集第4巻)

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2  池田 人類にとっていまだ遭遇したことのない新しい現象なり、事態なりに直面している状況から、私は、これまで一般的には相対するとみられた科学と宗教の関係においても、新しい関係が生まれるのではないかと考えています。昨年お会いした時にもあなたが話題にされていたアインシュタイン博士は「宗教なき科学は不完全であり、科学なき宗教にも欠陥がある」といっていますが、このことばなど、科学と宗教の新たな関係の確立が間近なことを示唆したものと思うのですが。
 科学至上主義は、いまやさまざまな行き詰まりを露呈し、人間の科学にたいする指導性が要請されています。それを考えた場合、宗教の指導性を考えないわけにはいきません。すでに各方面からそのことの問題提起はされています。もちろん科学をリードする宗教は、科学性をその内に包含しつつ、人間事象を解明していくものでなければならないでしょうが。
 マルロー たしかに、科学と宗教の新しい関係は生まれつつありますが、これには二つの意味があると思います。
 第一は、こんにち科学は、とほうもなく大きな変貌をとげつつあるということです。十九世紀においては、ただいまのお話のとおり科学はほぼ全面肯定されていましたが、いまではそれは疑問視されている。第二に、宗教的要素についてですが、たしかにわれわれはそれが如実に再現されつつあるのを感じてはいます。ただ、どのような形をとるかということに関しては、まったくなにも知らないのです。それというのも、はたして既存の諸宗教の再生という形をとるか否かが、ぜんぜん明らかでないからなのです。
 ひょっとするとそれは、われわれが思いもおよばないような、なにものか、といった形になるかもしれません。とにかく測り知れない変化が起こるに相違ありますまい。さきに申しあげた精神革命としか呼びようのないような。
 池田 精神革命ですね。その考えは私たちの運動が目指す人間革命に通じると思うのです。
 マルロー 私もそう思います。たしかにこれまでの歴史のなかで、人類はいくつかの精神革命ともいえることを経験してきました。もっとも、十九世紀からこのかた、それは起こっていないようにみえますけれども、経験してきたということはたしかです。かつては、宗教の誕生のつど、ある種の精神革命がもたらされたものでした。仏教誕生の百年まえには、人々は、仏教の展開していく内容など思いもよらなかったことでしょう。仏教の誕生は、その意味でもまさに革命だったのです。
 こうした事態を考慮したならば、十九世紀にあっては現在のわれわれの時代がまったく想像もつかなかったのと同じように、いまから百年後に二十世紀文明と絶対的に異なる文明が起こりうるということが、当然、考えられてしかるべきでしょう。その場合、かつてヨーロッパにキリスト教がもたらした精神革命といったものが、ふたたび仏教によってもたらされないという保証はどこにもない、ということです。

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