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日蓮大聖人・池田大作

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平和への決断と行動  

「人間革命と人間の条件」アンドレ・マルロー(池田大作全集第4巻)

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3  池田 私はこうみています。つまり創造力と牽引力をもった文明が生まれていないということが、現代の歴史的政治の空白を招いている、と。それは、価値の多様化、多元化の反映ということの、一面では証明だと思います。
 ただ、人類の未来を考えた場合、どうしても各体制、各民族の相互理解が求められてきます。相互理解には当然、相互努力がその前提としてなければならない。対立や孤立主義ではなく、理解と協調の精神を時代精神にまで高めていく必要があるでしょう。
 大局的に考えて、崩れることのない相互理解と友好の精神基盤は、民衆レベルの人間対人間の交流においてしか培いえないと思うし、“平和への決断と行動”も、そうしたベースをつくらずしては観念の域を出ないでしょう。政治体制や民族のちがいや、いわゆる文明の進歩の遅速など、世界の状況は一つ一つをみると異なっていますが、人類がかつてない危機に直面していることはだれも否定できません。それを思えば、人間はまずみずからの人間としての尊貴さを自覚する必要があります。
 一民間人にすぎない私が、世界を駆けめぐっているのも、この尊貴さの自覚とそれへの共感にたがいに立つためです。この人間の尊貴さを守り抜くという決断こそ、いま要請される行動のもっとも底流を形成していかなければならないと考えます。
 つまり本当の意味での平和へ向かう人間の力を引き出すためには、人間にたいする徹底した洞察に立たなければ不可能ですし、人間の、さらにいえば生命の尊厳を守るという視座を確立することが必要です。国家や体制という枠組みのなかで、それらの権益の擁護や、利害・面子(メンツ)などが先行するのではなく、もっと人間そのものが前面に出て、人間としての共感が平和行動の軸となってくることを望みたいのです。
 行動のなかで人間の善性を信じ、可能なかぎり触発しあっていきたい──というのが、私の率直な心境です。さいわい米・中・ソ三国を訪問して、未来への危機感をバックに、たがいの善性を信じあい、「反目」を「信頼」に変えゆこうとの感触を、かすかでもうることができました。ソ連では、「中国の孤立化は考えていない」という発言を聞きましたし、訪中にさいしては、けっして侵略主義をとらないとの言を耳にし、また事実そうであろうと、その印象を強くしました。これは私の実感です。

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