Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

核の脅威を絶滅する方法は?  

「人間革命と人間の条件」アンドレ・マルロー(池田大作全集第4巻)

前後
2  マルロー 唯一の原爆戦を避ける方法、核競争を避ける方法は、やはり監視であろうと思います。
 池田 だれが監視しますか?
 マルロー 原爆実験の停止はなんの重要性もありません。なぜならソ連は地球を破壊するにじゅうぶんな原爆の十一倍もの原爆を持っているからです。ですから、原爆実験の停止をするだけではなく、ストックをなくさなければならない道理ではありませんか。しかし、ソ連は、けっしてそうはしますまい。いっぽう、米国も、けっして自分たちのストックを取りさりはしないでしょう。なぜならソ連がストックを撤去するということは確かでないのですから。
 池田 なるほど。それでは、だれがストックを中止させる方法を講ずるのか? また、どのように?
 マルロー 私が、以前、故ケネディ大統領とこういった問題について話し合ったときにもはっきりわかったことですけれども、アメリカは、絶対に自国の核戦略をなくしてしまおうなどと思ってはいません。なぜなら、アメリカはソ連の同様な力にたいして核を保有しているのであって、これは先方も同じことなのです。したがって、だれも核ストックをなくそうなどと考えていないのが実態です。
 池田 そういう危険な状態では、なにかの偶発事で、突然に核戦争が起こる可能性がないとは断言できないと思いますが……。
 マルロー いまから三十年以内には、核戦争は起こらないでしょう。これについて、現実に起こったある事柄から、これから起こることの象徴、すなわち現実の象徴といったことをお話ししたいと思います。池田会長は、ひじょうに率直にものごとを理解なさるかたと思いますので、私もこの場合、歯に衣を着せないで、緊要な事柄をずばりとお話しいたします。
 具体例として、まず、イスラエルを例にとりましょう。現在、この国は、三個の原爆を持っています。ほかに、プラス飛行機等、まあ、いろいろと持っている。かりにこの三個の原爆中の一個を、アスワン・ダムで爆発させるというと、アスワン・ダムだけを破壊したと彼らは思うでしょうけれども、じっさいにはそこからナイルの堤防が決壊して、けっきょく、全エジプトが破壊されてしまう結果になるのです。だからイスラエルはあえて原爆を使用しなかった。
 池田 そのとおりだと思います。恐るべきことです。
 マルロー ソ連としては、したがってイスラエルに、もしおまえのところで、たとえ小さな原爆一個でも使ったならば、おれのほうから、でっかいのをお見舞い申す、というふうなことをいっているわけです。そこからして、小原爆を持てる国は大原爆を持てる国によって統制され、大原爆を持った国はそれを使用できないといった状況が出現している。それというのも、結果は地球壊滅ですからね。まことに核の脅威は否定的な、恐るべきものといわざるをえない。まさに悪魔です。
 池田 では、三十年以降には起こる可能性があるといわれるのですか?
 マルロー その点、よくご了解願いたいのですが、三十年以内には起こらないだろうと申しあげたのは、それからあとについてはわからない、ということです。
 私としては三十年までは予測することができる。はっきりと、起こらないといえる。その後についてはわからないということであって、その後に起こるというふうに申しあげることもできないわけで、それはちょうど、いま日本に、毎年二百万人の新生児があるからといって、いまから二十年、三十年後も同じリズムで生まれるとはいえないことと同様です。しばらくそういうカーブはつづくだろうけれども、ということです。
 池田 おっしゃる意味はわかります。

1
2