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日蓮大聖人・池田大作

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生命を尊厳ならしめるもの 「『人間の世紀』第一巻」から

1973.1.0 「平和提言」「記念講演」「論文」(池田大作全集第1巻)

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50  こう言えば、それでは尊厳とみたうえでなら、何をどのように殺してもかまわないのかという疑問が起こるかもしれない。私はそれは違うと思う。生命は、自己に関して少しでも生きながらえようとする、自己維持の特質を本然的に持っている。いわゆる生存本能というように、意識下の意識にもそれはあるし、更に深く生命体の機能にもそれは備わっている。他の生命を殺すということは、自己の生命の持っている、そうした特質、法則といったものへの違背になるわけである。そこには単に、意識のうえでの作為では変えられないものがあると思われるのである。
 周知のごとくキリスト教の原罪説は、アダムとイブが悪魔にだまされて、知恵の実を食べたことから人類の罪が始まったとする。その知恵とは善と悪とを判別する知恵であったという。このことは善悪の意識が人間の心に罪を刻むのだということになろう。もしそうであるなら、人間は人間としての高度な精神機能を営み続ける限り、罪の消えることはあり得ないことになる。私は、そうではなくて善と悪とをよく判断し、自らの醜さを深く省みながら、しかもその本源にある生命の尊厳性を実感しうるところに、人間の尊さがあるのだと考えるのである。
     (昭和48年1月 「人間の世紀」第一巻『生命の尊厳』所収)
 〔参考文献〕
 L。マンフオード『機械の神話』河出書屋新社
 L・マンフオード『生活の智恵』福村出版
 E・H・フロム『正気の社△L社会思想社
 速水敬二『ルネッサンス期の哲学』筑摩豊房
 ライフ人間世界史『古代アメリカ』タイムライフ社
 カント『人倫の形而上学の基礎づけ』

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