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日蓮大聖人・池田大作

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人類誕生の条件  

「生命を語る」(池田大作全集第9巻)

前後
13  川田 最後の質問になりますが、人類誕生の時点で輝きを増しはじめた知性、理性、倫理などと、宗教的衝動との共通の源泉は、どうやら、当の宗教心が帰っていくであろう本源的な宇宙生命自体である、と結論できそうですね。
 池田 人間生命の側からいえば、知性などと宗教的心情の胎動は同時です。しかし、万物の底を流れる悠久なる宇宙生命に考察の視点を移すとき、人の生命にあらわれつつも、瞬時にして帰還を求める宗教心こそが、生命の内奥からの知性の発現を呼びおこす力であり、倫理の法則をわきあがらせる泉であることが明確に理解できるでしょう。
 それは、人間の生命において、知性、倫理、良心よりも、宗教的な心情のほうが、より深く、そして、より本源的な位置を占めているからです。いいかえれば、人間が人間としての道を歩むべく、人類への″扉″を開く″鍵″は、知性でもなく、良心でもなく、じつに、宇宙本源の生命からわきおこる宗教的な衝動であり、生みの親への復帰を希求する生命奥底の宗教心だと推測するほかはないようだね。
 私は、先ほど、人間は、知性を駆使することによって人間になるといった。それにまちがいはないのだが、ここまで考察を深めてくれば、次のように主張しなおさねばなるまい。つまり、人は、宗教心を宇宙生命から強力にくみとることによって、初めて人となる――と。
 北川 もし仮に、この宇宙空間のなかで、ある生物が、宇宙本源の生命にふれ、そこから、宗教心をくみだすだけの条件がととのった場合、人間的な生命を得るのでしょうか。
 池田 宇宙のいずこにおいても、生きとし生けるものの生死流転の底に、宇宙本源の生命が息づいているかぎり、その生命にふれるところには、宗教的心情の胎動があり、偉大なる進化の飛躍がうながされるはずです。地球上における場合には、もっとも原始的な生命が姿をあらわしてから、三十億年にもおよぶ生物進化の基盤があった。その底には、たえず、宇宙本源の生命の脈動が波打っていたと思う。
 そして、人類の誕生において、宇宙生命の波動は、かつてないほどの高まりをみせ、さまざまの外的な条件を受けいれつつ、しかも、それらの条件に触発されながら、生物進化を人類進化へと飛躍させていった。この事実を、人間生命の側から見れば、宇宙本源の生命への、深く強烈なきずなを結んだことを意味する。
 こうした生命飛躍、人間的生命誕生への基本的な原理は、たとえ、人々の探索の手が届かぬような大宇宙のはてであっても、普遍的なものとして通用するのではなかろうか。本因となる宗教的な力と、さまざまの条件との、密接不可分の関わりあいのなかから、知性、倫理の″人間性の火″をいだいた生命が産声をあげていくのです。

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