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「二十一世紀への対話」アーノルド・トインビー(池田大作全集第3巻)

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3  (3) 人種差別について
 池田 ところでアメリカの抱える国内問題の最大のものに、人種問題があります。アメリカ社会で主導権を握ってきたのはアングロ・サクソン系の市民です。これに対して、同じ白人でも、ラテン系市民は恵まれない立場にあるようです。さらに、黒人や、アメリカの先住民であるインディアンは、悲惨とさえいえる立場におかれています。
 トインビー アメリカにはたしかにその問題があります。アングロ・サクソン系の白人が特別の優位を占めているわけですが、ドイツ系、スカンジナビア系、オランダ系の白人も、同等の地位を分かちもっています。ご記憶のことでしょうが、ルーズベルト家はオランダ系です。
 しかし、人種差別は決してアメリカだけに特有の問題ではありません。イギリスでは、黒人の数はアメリカに比べて非常に少ないのですが、それでもイギリス国民の、彼らに対する憎しみの感情には似たようなものがあります。この問題については、われわれは皆、アメリカ人を批判するにも謙虚でなければなりません。
 われわれイギリス人は、遠い昔、先住民たちをウェールズの山中へと追いやりましたが、ウェールズの人々はこのことを決して忘れてはいません。日本人もまた、かつてアイヌを追い立てて、いまではほとんど北海道だけに居住地を限っています。もちろん、祖先たちが昔受けた仕打ちを覚えているアイヌは少ないでしょうが、彼らもこれまで時折は、かつて多くの土地を領有していたことを思い起こすことはあったでしょう。そのようなとき、アイヌたちは、失った土地を悔やみ、それを奪った人々に怒りを感じたのではないでしょうか。
 このようにみてきますと、他の多くの国民も人種的偏見をもっており、アメリカ人がインディアンから土地を奪ったのと、まったく同じことをしてきたことに気づくのです。
 池田 問題はそうした人種的偏見をいかになくすかですが、これは人々の心の中にあるものですから、その解決にはたいへんな困難がともなうでしょう。政府も良識ある人々も、努力はしているようですが、やはり一般市民の心には抜きがたいものがあるのでしょう。
 これを解決するには、現在のアメリカでも黒人だけの国、インディアンだけの国をつくってはどうかという人もあります。たしかにそれも一つの考えですが、イスラエルのようなケースになることも考えなければなりません。互いに憎しみ合ったままで独立の国をつくっても、争いはなくならないでしょう。いずれにしても、人々の心から憎悪や偏見をなくす以外に、本当の平和をもたらす方法はないと考えます。
 トインビー 私は、黒人たると白人たるとを問わず、自分たちだけの独立国をつくろうという望みをもっている人々は、あまりに楽観的に過ぎるのではないかと思っています。インディアンのなかにも、合衆国内に自分たちだけの州を与えてくれと要求している人々もいますが、これまでのインディアン居留地の歴史はきわめて悲惨です。彼らは考えうる最も粗悪な土地を与えられたわけですが、それらの土
 地は行政的にも不行き届きです。
 南アフリカの白人たちは、独立国の代用としてはあまりにも貧弱な土地へ、黒人たちを押し込めようとしています。いわゆる″バンツースタン″という居住地がそれですが、これにはあまり成功の見込みがありません。
 私の考えでは、黒いアメリカ人も白いアメリカ人も、平等、相互尊重、友好の立場に立って共存していく以外にありません。
 池田 いずれにせよ一国内の人種間の調和を図ることは、きわめて困難なことです。これを解決するための何かよい先例をご存じですか。
 トインビー ハワイはもちろん特殊なケースですが、ここではヨーロッパ系、日系、中国系のアメリカ人が、ともに住み、人種間結婚もして、明らかに調和を保っています。ハワイでこのように実現していることは、他の場所でも可能であるはずです。

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