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日蓮大聖人・池田大作

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如来寿量品(第十六章) 十界論(中)「…  

講義「法華経の智慧」(池田大作全集第29-31巻)

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11  人類の境涯を引き上げる戦い
 斉藤 その意味で、人界は人界以上の境涯を目指して進んでこそ、人界としての意味があると言えるのではないでしょうか。
 池田 そう言えるでしょう。それが「天界」であるし、「二乗界」「菩薩界」「仏界」です。
 ともあれ「境涯」は不思議です。自分で気がつこうと気がつくまいと、自分の感情はもちろん、振る舞いも、思考も、人間関係も、人生行路も、自分の「境涯」によって大きく決定づけられている。
 個人だけではない。社会にも十界の傾向性がある。私どもの広宣流布ほ、個人の境涯を変えるのみならず、一国の境涯を変え、人類の境涯を引き上げる運動です。人類史上、いまだかつてない壮大な実験なのです。
 私は今、田中正造翁の晩年の言葉を思い出します。
 (翁は、足尾鉱毒事件の解決に努力した政治家、社会運動家〈一八四一年〜一九一三年〉。近代日本の民衆蹂躙に、生涯、抵抗した)
 「国は尚人の如し。人こえたるを以って必ずしもたつとからず。知徳あるを尊しとす。国は尚人の如し。腕力ありとて尊からず、痩せても知識あるを尊しとす」(明治四十一年十月の「日記」から、『田中正道全集』11〈田中正道全集編纂会編〉所収、岩波書店)
 日本の国は、内外の民衆を犠牲にして、「富国強兵」の「修羅」の道をひた走り、傲慢になって、魂を失った。
 「人間としての軌道」を失ってしまった。
 翁は「日本形ありとするも精神已になし。日本已になし」(大正二年四月二日の「日記」から、同全集13所収)とも言いきっている。亡くなる四ヵ月前です。日本が形の上でも滅びたのは、その三十二年後です。
 同じ悲劇を繰り返させたくないからこそ、私たちは叫んでいるのです。「慢心を捨てよ! 謙虚に人間主義の道を求めよ!」と。

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