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日蓮大聖人・池田大作

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第22巻 「命宝」 命宝

小説「新・人間革命」

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59  命宝(59)
 広島文化会館に到着した山本伸一は、勤行会の会場に姿を現した。
 勤行会でのあいさつで、彼は訴えた。
 「本当の仏法は、絢爛たる伽藍の中で、民衆を額ずかせ、僧侶が教えを説く、僧侶中心の伽藍仏法ではない。大聖人の仏法は民衆仏法です。主役は社会で戦う在家の民衆です。
 事実、皆さんは、立派な社会人として生活され、常識豊かに、社会の尊敬と信頼を勝ち得つつ、布教に汗を流し、指導もし、広宣流布を推進してくださっている。
 そして、万人が『仏』の生命を具えているという、生命尊厳の思想を、広く世界に伝え抜いておられる。
 この私たちの運動は、前代未聞の仏教運動といえます。いわば、創価学会の広宣流布運動こそ、現代における宗教革命の新しき波であり、人間仏法、民衆仏法の幕開けであることを、知っていただきたいのであります」
 中国・広島で、激闘の限りを尽くした伸一は、翌十二日には舞台を中部に移し、愛知、岐阜でも、全力の激励が続いた。
 全身全霊を注いでの山本伸一の指導行は、師走に入っても、とどまることはなかった。
 十二月三日から十日までは、鹿児島の九州総合研修所(当時)で第一回冬季講習会の指揮を執り、さらに、二十四日から二十九日まで、栃木・群馬指導が行われたのである。
 崩れざる幸福を築くには、わが生命を磨き、輝かせるしかない。そのための信仰であり、それを教えるための指導である。
 トルストイは、「生命は幸福の為めに我々に与えられている」と述べている。
 私たちは、幸福になるために生まれてきたのだ。皆が、幸福であると胸を張って断言できてこそ、真実の平和といえるのだ。
 伸一は、吹き荒れる北風の中を走った。彼は、寒風に挑むかのように、新しき年へ、ますます闘志を燃え上がらせていった。
 間断なき挑戦と闘争のなかにこそ、生命の歓喜と躍動があるのだ。

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