Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第19巻 「宝塔」 宝塔

小説「新・人間革命」

前後
48  宝塔(48)
 山本伸一は、脱脂綿を取り替えては、何人かの、泣いて赤く腫らした瞼を拭き、励ましの言葉をかけていった。
 皆、大切な兄弟である。伸一は、メンバーのためなら、どんなことでもするつもりであった。
 その伸一の心を感じ、メンバーはさらに、目を潤ませるのであった。
 伸一は、会場の前方に戻ると、皆の顔に、じっと視線を注いだ。
 「これで全員の顔を覚えたよ」
 その時、メンバーの一人が大きな声で言った。
 「先生! 私たちのつくった愛唱歌を聴いてください」
 「はい。聴かせていただきます」
 ギターの調べに合わせて、皆の歌声が響いた。
 当時、ヒットした歌謡曲の替え歌であった。
 一人ぼっちで夕暮れの 海をながめて 泣いていた
 あなたが今では 誰よりも 明るい地域の太陽よ
 皆の顔は涙に濡れていたが、その声は明るく、はつらつとしていた。
 歌い終わると、伸一は言った。
 「いい歌だね。もう一度歌ってよ」
 メンバーは、さらに力を込めて熱唱した。
 伸一は、大きな拍手を送った。
 「ありがとう! 
 この歌を吹き込んだカセットをください。私は三日後に中国に出発します。そのカセットを持っていって、毎日、聴きたいんです」
 歓声があがった。
 「では、次の予定があるので、これで失礼しますが、最後に皆で題目を三唱しましょう」
 彼は、メンバー一人ひとりを、尊極なる仏と仰ぎ、最敬礼する思いであった。
 「毅然として頭を上げるがよい。私の生命は飾り物ではなく、それを生きるために与えられたのだ」とは、トルストイが記したエマソンの言葉である。
 伸一は心で叫びつつ、題目を唱えた。
 ″君でなければ、あなたでなければ、果たせぬ尊き使命がある。
 その使命に生き抜き、広宣流布の天空に、尊厳無比なる宝塔として、燦然と、誇らかに、自身を輝かせゆくのだ!″

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