Nichiren・Ikeda
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56 飛躍(56)
山本伸一を見るメンバーの目は、アジアの繁栄と平和を築きゆかんとする誓いに燃えていた。
伸一は言葉をついだ。
「『諌暁八幡抄』には『月は西より東に向へり月氏の仏法の東へ流るべき相なり、日は東より出づ日本の仏法の月氏へかへるべき瑞相なり』と仰せであります。
仏法西還、東洋広布は御本仏たる日蓮大聖人の御予言であり、御確信であります。
しかし、それは、決して自然にそうなっていくものではない。
断じて『そうするのだ』という、弟子の決意と敢闘があってこそ、大願の成就がある。
私どもが立たなければ、大聖人の御予言も、虚妄になってしまうのであります。
仏法西還とは、仏法の人間主義に基づく平和の哲理を、アジアの人びとの心に打ち立てることです。そのために大事なのが文化の交流です。
文化を通して、民衆と民衆が相互理解を深め合っていくことこそ、反目を友情に変え、平和を創造していく土壌となっていきます。
そこに『東南アジア仏教者文化会議』の大きな使命があることを知っていただきたい。
私も仏法者として、アジアの、そして、世界の平和のために、命の限り走り抜きます。平和の大闘争を開始します。見ていてください!
本日は、その決意を披瀝させていただき、私のあいさつといたします」
大きな拍手が轟いた。
だが、この時、メンバーのなかには、世界の平和のために生命をなげうつことも辞さぬ伸一の覚悟を、知る人はいなかったといってよい。
ただ、峯子だけが伸一の心のすべてを知り、深く頷いていた。
メンバーは、一年を経た時、伸一の平和への偉大なる軌跡に、感嘆することになるのである。
アインシュタインは高らかに宣言する。
「私はただ平和主義者というのではなく、戦闘的平和主義者です。私は平和のために闘いたいと思います」
伸一の本格的な平和の闘争が、いよいよ始まろうとしていた。