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日蓮大聖人・池田大作

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第14巻 「烈風」 烈風

小説「新・人間革命」

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57  烈風(57)
 もし、喧伝されたように、学会員が、脅迫じみた言動をとれば、さらに学会に非難が集中することは自明の理である。そんな学会を貶めるようなことを、あえて学会員がするとは、どうしても考えられなかった。
 脅迫電話や脅迫状があったとするなら、学会への反発や敵意を高めさせるための謀略かもしれない。しかし、困ったことには、それを証明する手立てはなかった。
 ともあれ、学会が小さな団体であれば、なんでもないことでも、大きな勢力になれば、意図に反して相手は脅威を感じることもある。
 これまで学会は、若さゆえに、批判に対して、あまりにも敏感すぎたのかもしれない。日本第一の教団に発展した今、学会は、社会を包み込む、成熟した寛容さをもつことの大切さを、山本伸一は痛感するのであった。
 そして、今回の問題で、結果的に社会を騒がせ、関係者に迷惑をかけてしまったことについては、会長である自分が率直に謝ろうと思った。
 ただ、言論の暴力と戦う権利は誰にでもある。悪を許さぬ、清らかな正義の心は永遠に失ってはならない。
 その″純粋性″と″寛容性″とをいかにして併せ持っていくかが、これからの学会の課題であろうと彼は感じていた。純粋なる正義の心が失われてしまえば、「大河の時代」は、濁流の時代と化してしまうからだ。
 四月に入っても、野党各党は、衆院の法務委員会や参院の予算委員会などで言論・出版問題を取り上げ、学会への執拗な追及が続いていた。
 いまだ闇は深く、烈風が吹き荒れていた。
 言論・出版問題は、伸一の会長就任以来、初めての大試練となった。だが、それは、最も理想的な社会の模範となる創価学会をつくろうとする彼の決意を、一段と固めさせた。
 いわば、この試練が未来への新たな大発展の飛躍台となったのである。
 伸一の胸には、新生の創価の太陽が、赫々と昇ろうとしていた。
 そして、五月三日の本部総会で、伸一は、この言論問題について謝罪するとともに、壮大な世界の広宣流布への展望に立ち、新生の決意を披瀝していったのである。

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