Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第14巻 「使命」 使命

小説「新・人間革命」

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51  使命(51)
 池中を、さらに驚嘆させたのは、経済苦や病苦をかかえた学会員が、喜びにあふれて、学会活動に励んでいる姿であった。
 それは、彼の価値観、人生観を、根底から覆すものでもあった。
 ″俺の幸・不幸のとらえ方は、あまりにも表層的で観念的やった。結局は、人間というものが、わかってへんかったんやないか。これでは、本当に人を感動させる作品なんか、書けるわけあらへん″
 以来、売れっ子作家はペンが持てなくなってしまった。いや、しばらくは、ペンを持つまいと思った。彼は、学会の世界で一からやり直し、自分の生命を磨き、境涯を高めようと決意していた。真実の人間を見つめる「眼」を開こうと思った。
 作品を書かなくなった作家の生活は、すぐに困窮した。貴重な蔵書を売り、保険も解約し、生活をつないだ。しかし、彼は燃えていた。懸命に唱題し、書斎から飛び出して、学会活動に挑んだ。
 彼は、倒産や難病を乗り越えて、人生の凱歌を高らかに歌う、たくさんの同志と語り合った。何人もの子どもを育てながら仕事をこなす婦人や、海外雄飛を胸に描いて、町工場で働く青年とも対話を重ねた。
 池中は、学会活動を通して、人間の輝き、人間の強さを知った。人間がもつ、無限の可能性を実感した。彼の心の世界は、大きく変わっていった。生命の底から、創造の息吹がみなぎり始めていた。
 文芸部が結成され、彼が第一期生の任命を受けたのは、ちょうど、そのころであった。
 池中は、再び執筆を決意し、優れた人間洞察の歴史小説を、次々と発表していくことになる。まさに、「妙とは蘇生の義なり」との仰せ通りの復活であった。
 こうしたメンバーが中核となって後輩の育成にあたり、やがて、文芸部からは、日本を代表する作家や、各文学賞の受賞者、そしてまた、正義の言論の闘士など、多くの逸材が育っていくのである。
 絢爛たる人間文化の創造――ここに創価学会の尊き大使命がある。

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