Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第13巻 「北斗」 北斗

小説「新・人間革命」

前後
53  北斗(53)
 少年は顔を上げた。その瞳が輝きを放った。母親の目は、感涙に潤んでいた。伸一は語った。
 「小児マヒであった君が、明るく元気で、勇気をもって幸福な人生を生き抜いていけば、同じ病気に苦しむ、多くの人の希望になるじゃないか。それは、君でなければできない、君の使命でもあるんだ。使命を自覚すれば、歓喜がわき、力があふれる。その根本が信心なんだよ。だから、何があっても、しっかり信心していくんだよ」
 「はい!」
 弾んだ声であった。
 「君には、念珠をあげようね」
 念珠を受け取る少年を拍手が包んだ。
 「よかったわね」
 「頑張れよー」
 あちこちから、声援が起こった。そこには、創価家族の温かさがあった。この座談会でも、さまざまな質問が続いた。家族のことで悩む、女子部員の相談もあった。心臓病など、幾つもの病をかかえた壮年の質問もあった。
 伸一は、その一つ一つに真剣勝負で臨んだ。そして、友の顔に微笑が浮かび、瞳が決意に燃え輝くたびに、励ましと賞讃の拍手が広がった。
 フランスの歴史家ミシュレは言った。
 「生命は自らとは異なった生命とまじりあえばまじりあうほど、他の存在との連帯を増し、力と幸福と豊かさを加えて生きるようになる」
 人間は、人間の海のなかで、励まし合い、触発し合うことによって、真の人間たりえるのだ。学会の座談会は、まさに、人間の勇気と希望と歓喜と、そして、向上の意欲を引き出す″人間触発″の海である。
 山本伸一が率先して、座談会を駆け巡っている様子や、その語らいの詳細が機関紙誌に報道されると、学会中に大きな波動が広がった。運営にあたる幹部をはじめ、皆の決意と意識が一新された。活気にあふれ、企画も創意工夫に富み、充実した座談会が、全国各地で活発に開催されるようになった。
 民衆の蘇生の人間広場である、「座談会革命」がなされたのである。

1
53