Nichiren・Ikeda
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51 天舞(50)
日本を「独自の文明をもつ、太平洋に存在する大陸」であると位置づける伯爵の、日本への期待は大きかった。
伯爵は、力を込めて、伸一に訴えた。
「大事なことは、偉大な思想を(日本が)外国に向かって、世界に向けて紹介することです。私は、その時が、すでにきていると信じます。その偉大な思想とは、インドに起こり、中国を経て、日本で大成した、平和的な、生命尊重の仏教の思想です」
それは、伯爵の熱願であったにちがいない。
伸一には、その言葉が遺言のように感じられてならなかった。
現代社会の不幸の元凶は、人間生命が尊厳なる存在であるという、本源的な考えが欠如していることだ。この思考を欠いては、人間の復権はありえない。
生命の尊厳とは、人間の生命、人格、個人の幸福を、いかなることのためにも、手段にしないということである。そして、それを裏付ける大哲理が世界に流布されなくては、本当の人類の幸福も平和もない。
伯爵は、それを痛感していたのであろう。
伸一は、誓いを込めて語った。
「それは、私自身、これまでも真剣に取り組んできた問題です。これからも、生涯の念願として、世界の平和のため、人類の幸福のために、微力をつくす決意でおります」
伯爵の口もとがほころび、顔には幾重にも深い皺が刻まれた。
この対談は、翌一九七一年(昭和四十六年)の二月から、サンケイ新聞に、「文明・西と東」のタイトルで、半年間にわたって連載された。
週二回、五十三回にわたって、紙面を飾ったのであった。
さらに、七二年(同四十七年)には、対談集『文明・西と東』として、サンケイ新聞社出版局から発刊されたのである。
この書を手にした人びとは、世界的な知性が創価学会を渇仰していることに驚愕した。また、同志は、いよいよ仏法という希望の旭日が、世界の海原に昇りゆく、時代の到来を感じるのであった。