Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第12巻 「愛郷」 愛郷

小説「新・人間革命」

前後
50  愛郷(50)
 やがて、飛騨の山河には、功徳の花々が咲き薫っていった。
 総支部長だった土畑良蔵も、後年、新たに始めた運送関係の仕事が軌道に乗り、生活も安定。後継者にも恵まれ、意気揚々と、飛騨の広布に走り続けた。
 旅館業で成功を収めた人もいる。家庭不和や病を乗り越えた人もいる。それぞれが見事な幸福の花園を築き上げていったのである。
 村(町)おこしや地域の活性化は、どこでも切実な問題であるが、特に過疎の村や山間の地などにとっては、存亡をかけた大テーマであろう。
 だが、住民が、その地に失望し、あきらめをいだいている限り、地域の繁栄はありえない。
 地域を活性化する源泉は、住民一人ひとりの愛郷の心であり、自らが地域建設の主体者であるとの自覚にある。いわば、住民の心の活性化にこそ鍵がある。
 大聖人は仰せである。
 「今日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者の住処は山谷曠野せんごくこうや皆寂光土みなじゃっこうどなり
 いかなるところであろうが、私たちが信心に励むその場所が、仏のいる寂光土となる。
 ゆえに創価の同志は、現実を離れて、彼方に理想や幸福を追い求めるのではなく、自分のいるその地こそ、本来、宝土であるとの信念に生き抜いてきた。
 そして、いかなる逆境のなかでも、わが地域を誇らかな理想郷に変え、「幸福の旗」「勝利の旗」を打ち立てることを人生哲学とし、自己の使命としてきた。
 地域の繁栄は、人びとの一念を転換し、心という土壌を耕すことから始まる。
 そこに、強き郷土愛の根が育まれ、向上の樹木が繁茂し、知恵の花が咲き、地域は美しき幸の沃野となるからだ。
 また、そのための創価の運動なのである。
 今、高山市内には、二〇〇二年(平成十四年)の完成をめざして、「二十一世紀研修道場」の建設が進んでいる。敷地内には、高山文化会館も誕生する。
 それは、飛騨の新しき栄光の未来を築く、光源となるにちがいない。

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