Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第5巻 「歓喜」 歓喜

小説「新・人間革命」

前後
45  歓喜(45)
 カタコンベの見学を終えて、外に出ると、同行の青年が感無量の顔で、山本伸一に言った。
 「先生、苦難の歴史を経ることによって、不屈の信仰が形成されていくものなんですね……」
 「そうだ。私も、そのことを、ずっと考えていた。
 キリスト教の歴史を見る時、三百年という長い苦節はあったが、その教えはローマに広まり、遂に勝利を得たことで、彼らの信ずるイエスの『正義』は証明された。大切なのは後に残った弟子がどうするかだ。
 学会も、初代会長の牧口先生は獄死された。戸田先生という弟子がいなければ、学会も壊滅していたし、大聖人の仏法も滅していた。
 更に今後、私たちが何をするかだ。もし、学会が滅びてしまえば、真実の仏法を伝えることはできない。牧口先生の価値創造の哲学も、戸田先生の平和思想も滅びてしまうことになる。いや、牧口先生の死も犬死にになってしまう。
 ともかく、残った弟子がすべてに勝つ以外にない。自分に勝ち、宿命に勝ち、逆境に勝ち、人間王者になることだ。大勝が仏法を、広宣流布を永遠ならしめる。また、大勝のなかにこそ、信仰の大歓喜がある。
 さあ、いよいよ明日は帰国の途につく。日本の広宣流布という、民衆の幸福のための新しき戦場が待っている。
 戦おうよ、力の限り。そして、勝とう!」
 皆、決意に燃えた目で、伸一を見ながら、大きく頷いた。
 一行は車で、ローマ市内を目指した。
 石造りの建物が建ち並ぶローマの街は、美しい夕焼けに染まっていた。
 伸一は、「ローマは一日にして成らず」との言葉を思い出していた。一都市国家から始まったローマが、大帝国を築き上げるまでには、数百年の歳月を要している。
 ましてや、人類の胸中に「永遠の都」ともいうべき生命の黄金の城を築き、世界の平和を打ち立てんとするのが広宣流布である。その大偉業は、もとより、一朝一夕に成るものでは決してない。
 百年、二百年、あるいは、数百年以上の歳月を要するかもしれない。
 しかし、それは、断じて成し遂げなければならない創価学会のテーマである。
 そのためには、当面する一つ一つの課題に勝ち切ることだ。
 今の勝利なくして未来の栄光はない――伸一は、落日に燃えるローマの街並みを見ながら、強く拳を握り締めた。

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