Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第4巻 「凱旋」 凱旋

小説「新・人間革命」

前後
36  凱旋(36)
 山本伸一は、この有徳王と覚徳比丘について述べ、こう語っていった。
 「私ども創価学会は、日夜、朝な夕な、不幸な人びとを救おうと折伏に励み、教学に、座談会にと、懸命に取り組んでおります。また、総本山、日達上人をお守り申し上げております。
 この創価学会の姿、精神こそ、仏法の方程式のうえから、有徳王の姿であり、有徳王の精神であると、私は強く信ずるものでございます」
 伸一は、話しながら、戦時中、宗門が謗法に染まり、腐敗、堕落していったなかで、正法正義を貫いて殉 教 した牧口常三郎のことが頭をよぎった。
 牧口の振る舞いは、有徳王のみでなく、覚徳比丘の姿でもあったのではないかと、彼はふと思ったが、それには触れなかった。
 伸一は、将来、いかなる時代、いかなる状況に置かれたとしても、学会は死身弘法の精神で、日蓮大聖人の仏法の正法正義を守り抜くことを決意していた。
 彼は、言葉をついだ。
 「思えば、昨年の五月三日、この壇上において、日達上人より、『詮ずるところは天もすて給え諸難にもあえ身命を期とせん』との御聖訓を頂戴いたしました。
 今、その御聖訓を、もう一度、胸に刻んで、勝って兜の緒を締めて、親愛なる皆様方のご協力を賜りながら、来年の五月三日を目指し、更に、一歩前進の指揮をとっていく決意でございます。
 願わくは、皆様も私とともに、御本尊様を抱き締めて、広宣流布への勝利の歩みを、貫き通していっていただきたいのであります。
 以上で、私のあいさつに代えさせていただきます」
 歓声と大拍手がドームにこだました。
 黄金の凱歌の年輪を刻んだ学会は、今、再び第二年へと船出したのである。
 学会歌の大合唱のなかを退場する伸一の胸には、闘魂の炎が鮮やかに燃え盛っていた。
 彼が進もうとする広宣流布の道は、失敗も、後退も許されなかった。いかなる困難が待っていようが、連続勝利をもって踏破しなければならない。
 伸一は、それが、避けることのできない自己の使命であることを、深く自覚していた。
 彼は、大鉄傘の高窓から差し込む光を仰いだ。
 ″暗雲の上にも、いつも太陽は燦然と輝いている。私の太陽は戸田先生だ。その太陽を心にいだいて、先生の弟子らしく、この一年もまた、走りに走ろう″
 光に照らされた彼の顔に、さわやかな微笑が浮かんだ。

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