Nichiren・Ikeda
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第3巻 「平和の光」
平和の光
小説「新・人間革命」
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42 平和の光(42)
二月十四日は、いよいよ帰国の日であった。
午前九時過ぎ、岡郁代と平田君江が、一行をホテルに迎えに来てくれた。
空港に着くと、山本伸一は、出発を待つ間、終始、二人と語り合い、励まし続けた。
「当面の目標として、香港は百世帯を目指してみてはどうだろうか。
こういうと、大変なことになったと思うかもしれないが、たいした努力をしなくても達成できるような目標では、皆さんの成長がなくなってしまう。
困難で大きな目標を達成しようと思えば、御本尊に真剣に祈りきるしかない。そうすれば功徳があるし、目標を成就すれば、大歓喜がわき、信心の絶対の確信がつかめます。だから、目標というのは、大きな方がよいのです」
伸一は二人に、地区の幹部としての、本格的な訓練を開始していたのである。
彼は、岡が御書を持っているのを見ると言った。
「香港の皆さんを代表して、記念に何か揮毫して差し上げましょう」
そして、こう認めた。
「妙法に照らされ 世界一の幸福者に」
岡は、揮毫された御書を抱き締めて言った。
「先生、今度はいつ、香港に来ていただけるのでしょうか」
「来年も必ず来ます。再来年もやって来ます。安心してください」
伸一は、こう言って微笑み、二人と固い握手を交わして、別れを告げた。
現地時間の午前十一時過ぎ、飛行機は啓徳(カイタック)空港を飛び立った。
また一つ、恩師との誓いを果たし、アジアに平和の太陽の光を注いだ伸一の心は、晴れやかであった。
″この秋にはヨーロッパだ。そして、来年の今ごろは中近東にも足を運ぼう″
世界の広宣流布をわが使命とする彼の構想は、止まるところを知らなかった。
一行の乗った飛行機が羽田に到着したのは、午後三時過ぎであった。
伸一が空港の控室に姿を現すと、大きな拍手がわき起こった。
「お帰りなさい!」
「お疲れさまでした!」
口々にあいさつする代表の幹部たちに、伸一は力強い声で語った。
「ありがとう。私は、日本の指導にまいりました。
東洋広布の道標は打ち立てられた。香港の同志も立ち上がりました。
さあ、今度は広布の大舞台・日本です!」
獅子吼は轟いた。
今、新たな日本の大回転が始まろうとしていた。