Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

大自然との語らい 自然と「調和」か「破壊」か人間自身の「生き方」が大切

「青春対話」(池田大作全集第64巻)

前後
11  行動! 美しい地球を愛すればこそ
 池田 その通りです。自然を守るとは、口でいうほど、やさしいことではない。時には、妨害もある。命を狙われる場合さえある。
 アメリカの海洋生物学者、レイチェル・カーソンさんを知っているだろうか。『沈黙の春』(一九六二年発刊)は、環境汚染を取り上げた、勇気ある一書です。
 当時、アメリカでは、危険な農薬が大量に撒かれていた。効果があるかに思えたが、次第に、害虫以外の虫も、魚も、姿を消していった。楽しく歌っていた鳥たちも次々と死に絶え、春は「沈黙」してしまった。農薬を浴びた人間にも病気が続発しはじめた。
 彼女は、この事実を告発し、危険な農薬の使用禁止を訴えたのです。発表するやいなや、想像を絶する攻撃が始まりました。
 ―― 正しいことを主張しても、攻撃されるのですか。
 池田 正しいからこそ攻撃されるのです。それによって莫大な利益をあげている企業から。企業と手を結んでいる役人、政治家たちから。いつの時代も同じです。この構造を見破らなくてはいけない。
 農薬の関係者による非難キャンペーン。業界雑誌も彼女を風刺した。彼女の本を「カーソンが非難する農薬よりも有害である」(リンダ・リア『レイチェル・カーソン』上遠恵子訳、東京書籍)と。
 州の研究機関すら彼女に反論した。その研究機関は化学企業から多額の寄付金を受けていました。″『沈黙の春』を沈黙させよう″。テレビ・ラジオが平均・五十分ごとに彼女を攻撃した日もあった。医師会すら、″農薬の人体への影響は、農薬業界に聞くように″と勧めていたのです。
 しかし、彼女は訴え続けた。″これは、世界が危険な物質によって汚染されているという本当に恐るべき事実の一部分でしかない″と。そして民衆の支持を獲得し、環境保護の思想を全米、全世界へと広げていったのです。その信念の炎は、二年後に死去(一九六四年四月)した後も人々の心で燃え続け、大きく世論を変えていったのです。
 彼女は、若い人たちに語り残している。「地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう」(『センス・オブ・ワンダー』上遠恵子訳、佑学社)
 ケニアのことわざにある。「地球を大切にしなさい。それは、親からもらったものではなく、子どもたちから借りているものだから」と。
 しかし、環境を破壊する現代の大人たちは諸君や諸君の子孫の世代に、過大な″負の遺産″を残そうとしている。「経済」を最優先し、これまで自然によって守られてきた健康も、文化も、環境も、生命も売り渡そうとしている。だからこそ君たちが行動するべきなのです。まだ「地球の美しさと神秘」を見失ってない君たちが、声をあげるべきなのです。諸君が生きる二十一世紀を諸君の手で守る戦い、「生命の世紀」とする戦いは、もう始まっているのです。

1
11