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日蓮大聖人・池田大作

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国際人って何? 世界で輝け!その武器は「語学」と「哲学」

「青春対話」(池田大作全集第64巻)

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1  池田 さあ、きょうも語ろう!きょうのテーマは「国際人」だね。
 ―― はい。ゲストとして、SGI公認通訳(英語)の方に来てもらっています。
 SGI公認通訳 よろしくお願いします。私も高等部出身です。
 池田 こちらこそ、よろしく。
 「国際人」というと、みんな、どんなイメージだろうか。
 ―― はい。高等部員に聞いてみました。
 圧倒的に多かったのが、「語学が自由に操れる人」です。
 ほかには「どんな国の人とも友達になれる人」「自分の国の感覚が世界の常識と思わない人」「日本という枠を超えて、世界的視野に立てる人」というイメージの人もいました。
 また、こんな声もありました。「仕事が世界と直につながっている人」「自己主張をしっかりともち、平等に、ものごとを見れる人」などです。
2  人間として立派な人格が「国際人」の要件
 池田 みんな、しっかりした考えをもっているね。全部、それぞれ正しいと思う。そのうえで、私が言っておきたいのは、じつは、広宣流布のために働いてる、皆さんのお父さん、お母さんこそ、″国際人″ということです。
 その理由は、毎日、全人類の幸福を真剣に祈っている。そして、利己主義を捨てて、人の幸福のためにボランティアで行動している。毎日、忙しいなかを、世界的な大哲学である仏法を学んでいる。その人こそ、「世界から尊敬される人」です。「世界に通用する生き方」なんです。たとえ一回も外国に行ったことがなくても。
 その証拠に、SGIは世界中から、絶賛されています。
 ―― 池田先生へのぼう大な数の「賞」や「表彰」「名誉博士号」などが、その証明ですね。
 池田 私は皆さんのお父さん、お母さんの「代表」として受けているんです。だから、皆さんのお父さん、お母さんが受賞したのと同じ意義になるんです。世界が諸君のご両親をたたえているんです。
 SGI公認通訳 私も、いろんな国に行って、SGIへの期待に、びっくりすることがあります。
 九六年も、青年部の交流団の一員として、インドへ行きました。西ベンガル州におられるハリム国連協会世界連盟の会長を訪ねた時、連盟の方が突然、「池田SGI会長の国連への提言を、いつも興味深く読んでいます。きょうは、会長の提言について、一緒にディスカッションしましょう」と言われました。「SGI会長の哲学を教えてほしい」と言うんです。スケジュールにはなかったことなので、驚きました。(=九七年九月、同協会からSGI会長に「国連支援と世界平和推進への計り知れない努力」を讃えて「特別表彰」が行われた)
 ―― 世界の未来をどうするのか。そういう責任感をもっている人には、同じ意識で真剣に行動している人のことがわかるんですね。
 池田 ご両親はじめ諸君の先輩は、名誉もいらない、名声もいらない、安逸もいらない、ただ自分の信念を真っすぐに貫いて、「自分も幸福になり、人も幸福にする」という人生を生きてきた。人間として最高の人生です。この「人間として」が大事なんです。「人間として」立派な人格こそが「国際人」の要件なんです。
 ―― 「人間として」貧しい生き方をしていて、どんなに英語ができても、世界には通用しないですね。むしろ、バカにされるかもしれません。
3  「人のために」「社会のために」
 池田 もちろん語学は大切だが、語学はあくまで手段です。問題は、その語学で「何をするのか」なのです。
 日本人は、ボランティア精神が薄いと言われる。しかし、それではいけない。
 第一に、国際的に信用されない。第二に、自分自身が小さく固まってしまい、生き生きとしない。「人のために」「社会のために」。これは人間にとっての基本です。今の日本の教育は、それを教えていない。諸君のお父さん、お母さんは、それをやっているのです。本当に尊いことだ。
 ―― 国際人といっても、「人間として」自分を磨くということが基本なんですね。
4  ″自分なき″日本人
 池田 イギリスで聞いた話だが、「爆弾が落ちた時、イギリス人は″負傷者がいないか″と、そこに行く。日本人は、そこから逃げていく」と。また「日本人は、うわさで判断する。外国の紳士は、必ず自分で見て確かめる」と言った人もいる。
 日本人は″自分がない″というか、自分の目で見、自分の頭で考え、自分の信念で行動しない。いつも、他人がどうかを考え、格好とか、相手との上下関係を気にして生きている。
 SGI公認通訳 かつて日本に赴任した、ある外交官のお話ですが、自分の肩書を言うと日本人の態度が一変するのが、とてもいやだったそうです。
 ″本当に心の通う交流がしたい″と思い、週末になると、わざと、ふつうの格好をして、釣りに行ったり、小料理屋に行ったりしました。もちろん、相手には絶対に自分の肩書を明かしません。ある時、レストランで食事をして、一緒になった日本人といろいろ話をしました。食べ終わって、「ぜひ、名刺を」と言って聞かないので、しかたなく渡したそうです。すると、その日本人は、土下座をするようにして謝ったというのです。その外交官の方は、びっくりするとともに、「ああ、本当に『教育』がないな」と悲しくなったそうです。
 ―― 象徴的な話ですね。
5  6千人の命のビザ
 池田 日本は「人間として」開かれた国にならなければいけない。
 第二次世界大戦の時、多くのユダヤ人を助けた杉原千畝氏(一九〇〇〜八六年)の行動は有名です。ナチスによるホロコースト(大量虐殺)が進められていた一九四〇年。杉原氏は、リトアニアの日本領事館で領事代理をしていた。氏のもとへ、ポーランドから多くのユダヤ人が殺到した。それは日本を経由して第三国へ逃れる″通過ビザ″を入手するためです。
 しかし、日本の外務省は、三度頼んでも「ビザを発行してはならない」という。杉原氏は悩んだ。そして決めた。「私を頼ってくる人々を見捨てるわけにはいかない。でなければ私は神に背く」(杉原幸子『六千人の命のビザ』大正出版)と。そして、外務省の訓令を無視して、氏はビザを発行する。それによって、約六千人の命が救われたのです。(この行為は戦後、″訓令違反″とされ、氏は辞職をさせられた。一九九一年、外務省より名誉回復)
 夫人の杉原幸子さんは、当時を、こう振り返っておられる。
 「どの民族であれ、人間の命にかわりはありません。主人は助けを求めている人がいて、自分が助けられる立場にありながら手を差し伸べないのは、人間のなすべきことではないという信念をもっていました」。さらに「今、日本は豊かでいい時代を迎えています。でも、それに甘えないで、世界のことを考えてほしいですね。もし、若い人が遊んでばかりいれば、日本もやがて下り坂になってしまいます」(聖教新聞、一九九一年十二月十五日付「サンデー・インタビュー」)とも述べられています。
6  欧米には劣等感、アジアには優越感
 ―― まったく、その通りだと思います。どうして、多くの日本人は、心を開けないのでしょうか。これには、教育の問題も大きいと思います。
 また、明治以降、ずっと「欧米への劣等感」に悩まされてきて、その反動で「アジア人、アフリカ人には優越的な意識をもつ」という屈折した心になってしまった。その結果、どの国の人とも対等の心でつき合えなくなった。
 池田 多くの観点があり、くわしくは論じないが、一つだけ、トルストイの言葉を引いておこう。彼はこう言っている。
 「宗教をみとめない人々の宗教とは、有力な多数が行なっている一切のことに従うという宗教であり、つまり、より簡単に言えば、現行権力への服従の宗教なのである」(「わが信仰はいずれにありや」中村融訳、『トルストイ全集』15所収、河出書房新社)。この「宗教」を、広い意味での「哲学」と言ってもいい。
 ―― たしかに、杉原さんも、″今、助けなければ神に背くことになる″と思って、当時の日本の権力に服従しなかったんですね。
 どんな強い力で圧迫されようと、「正しいことは正しいんだ」と言いきれる勇気ですね。その勇気は、自分の信念というか、哲学、宗教から生まれてきます。
7  哲学とは「正しいことは正しい」と貫く信念
 池田 哲学と言うとむずかしいが、「これだけは譲れない」という信念のことです。私の恩師・戸田先生の「哲学の定義」は有名です。
 「『哲学』というものは、西洋の哲学でいうデカルトやカントなどのように、めんどうなものではない。わたくしは大学を出ないからわからないというものもいるが、哲学するということは、考えることである。
 いちばんやさしい哲学は、水戸光圀(=水戸黄門)の漫遊記があるが、そのなかに、いなかでおばあさんに水をくれといって、米俵に腰をかけたら、おばあさんが、これは水戸様に出す米だといって怒った。光圀は頭をさげてあやまった。聞けばこっけいな話しであるが、おばあさんには、自分の作った米を領主様にさしあげること、このことが哲学である。『だれがなんといっても、これだけはどうしようもない』これが哲学である」(『戸田城聖全集』4)と。
 戸田先生も、軍部の権力に牢屋に入れられても、「これだけは譲れない」といって平和の信念を貫かれた。牧口先生も同じです。今、お二人の命をかけた行動は、世界中から尊敬されています。
 牧口先生も、戸田先生も、日本から一歩も出られていない。しかし、九十年以上も前に、牧口先生は、自分は「一世界民」だと言われた。また、戸田先生は「地球民族主義」を言われて、常に全東洋、全世界の未来を見つめておられた。
 要するに、日本人だから、外国人だからということではなくて、同じ人間として、ともに苦しみ、悲しみ、喜び、連帯していける人こそ、本当の「国際人」ではないだろうか。
 ―― 何だか、今まで、ばく然としていた「国際人」というのが、急に身近な感じになってきました。今までは、英語がペラペラで、外向的で、スマートで……といったイメージだったんですが。
 考えてみれば、語学がどんなにできても、それを使って他の国の人を苦しめていたんでは、しかたありませんね。
8  約束を守る人に信用と友情が
 池田 国際人として大切なことは「約束したことは守る」ということです。″日本人は、その国で約束しても、日本に帰って、飛行機から降りると、もう約束を忘れている″と言われる。それでは信用が得られるはずがない。
 ―― 池田先生の海外からの絶大の「信用」も「友情」も、約束をひとつひとつ、がっちりと守ってこられた積み重ねだと思います。
 池田 友情です。海外の人は、日本人が思っているよりも、ずっと深く「友情」を大切にしている。「友情」が一つのバックボーンになっている。
 友情を裏切らない人。友情を結んでいける人。それが国際人の要件です。
 諸君のなかには、「自分は英語も苦手だし、国際人なんて関係ない」と思っている人もいるかもしれない。しかし現実は、望もうが望むまいが、二十一世紀、諸君が生きる時代は急速に「世界一体化」になっていく。
 エジプトのムバラク大統領とお会いした時、言われていた。「ポーランドの大統領がいいことを言いました。一箱のマッチでも、一国だけではできないと。軸にする木、イオウ、箱、接着剤など、多くの国が協力しあって、一つのものが完成します」(「聖教新聞」一九九二年六月一八日付)
 このあと、私は、ポーランドのワレサ大統領(当時)とも会見しました。
 このように、すごい勢いで「物の国際交流」が現実になっている。インターネットをはじめ「情報の国際交流」も、すごいスピードです。
 だからこそ、それらを平和の方向へ向けていくための「心の国際交流」が絶対に必要なのです。そのために、SGIは平和・文化・教育の運動を、全世界で展開しているのです。
 ―― いちばん、世界に必要なことだから、世界の人がたたえるんですね。反対に言うと、創価学会の運動の実態を自分で確かめもせず、まとはずれの批判ばかりしている日本の社会は、それだけ″国際化から遅れている″ということだと思います。
 池田 そこで大事なのは、やっぱり「語学」なんです。世界的哲学をもった諸君だからこそ、大きく活躍するためには語学が大事なんです。
9  語学は受け身ではなく「集中力」が必要
 池田 私は、世界五十ヶ国以上を訪問し、友情を結んできた。
 「いちばん後悔したことは何か」と聞かれれば、各国の著名人と対談した際、「語学ができれば、どんなにか良かっただろう」と思うことです。
 じつは青年時代に、語学の必要性を感じて、英語を学ぼうとした。しかし、当時は戦争中。″敵国語″として使うことさえできなかった。戦後も、私は肺病。戸田先生の事業は失敗。私は、あばら骨が浮き出るほど痩せた。食事を十分にとれず、血を吐くこともあった。それでも、寝る間も惜しんで、師のために戦った。
 大学に通えなかった分、せめて私が教えてあげたい――戸田先生は十年間、毎朝、万般の勉強を教えてくださった。戸田先生は、数学をはじめ、多くの学問の核心をつかんでおられた。その天才的な先生でも、英語は得意ではなかった。「ステーション(駅)」を「停車場」「停車場」といわれる明治の方であった。
 私は、自分で英語の個人教授も受けたが、その教師は金を取ることだけ考えて、ろくに教えてくれなかった。結局、多忙だったため、通訳に任せるようになった。
 その点、諸君は、その気になれば、いくらでも語学を身につけられる環境にある。あとは自分の努力次第です。
 SGI公認通訳 よく高等部や中等部の会合で話をさせていただくことがあります。
 「英語は好きですか」と聞くと、好きな人はパラパラ……。きらいな人はと聞くと、皆が「ハーイ!」と。
 池田 あなたは創価大学出身でしたね。創大からアリゾナ大学に留学したんだね。
 SGI公認通訳 はい。そうです。
 池田 どうやって英語を学んだのか、後輩のために、少し″秘訣″を教えてあげてください。
 SGI公認通訳 はい。でも、私も通訳としては、まだまだ、これからで、″勉強中″なんですが……。
 池田 英語が好きになった、きっかけは?
 SGI公認通訳 はい。きっかけは音楽でした。ビートルズのレコードを何回も聴いたり、ラジオでFEN(フェン。米軍極東放送網)の英語放送を聴いていました。言っていることは、ほとんどわかりませんでしたが。そうすると、学校で習う発音とちょっと違うなと気づきました。歌詞カードを見ながら、一緒に歌ったりもしました。
 学校の教科書も、とにかく覚えるくらいに読みました。音読は、効果があると思います。それとともに、学校で毎週、単語テストがあり、そのお陰でずいぶん、ボキャブラリー(語彙)が増えました。これは、積み重ねが大事です。
 大学へ行ってからは、FENの短いニュースを聴いてディクテーション(聴いて書き取る)もしました。先輩から「百回聴いて、わからなかったらやめていい」と。
 また洋画もよく見に行きました。ただし、朝から行って、同じ映画を三回見るのです。三回目には、字幕なしで、大体わかる……気がしました。今はビデオがあるから、いいですね。
10  上達する秘訣
 ―― そうは言っても、私たちが日常使わない外国語です。上達する秘けつは、あるのでしょうか。
 SGI公認通訳 ある期間、集中して学ぶことだと思います。自分がパッと開けるまで、頑張って努力することです。受け身の姿勢であったり、漫然とやっても、身につきません。
 たとえば、『星の王子さま』『桃太郎』など、自分が知っている内容の外国語本を「読み切る」と決めてはどうでしょうか。映画のビデオでもいいし、要は、自分の興味ある、身近なところからトライしていくことです。
 ―― 目安として、どれくらいの期間、取り組めばよいのでしょうか。
 SGI公認通訳 人により違いますが、必ず「わかり始める」瞬間があります。その瞬間まで、辛抱強く取り組んでください。赤ちゃんは、ある時になると、突然、言葉をしゃべり出します。これと同じ原理です。
 いろんな教材がありますが、目移りせずに、いったん決めたら、それをマスターするまで頑張ることです。
 ―― どうしても授業についていけないと思う人は、中学校の英語の教科書を丸暗記するのがいいとも言います。グーンと力がつきます。
 池田 自分の「苦手意識」に負けてはいけないね。語学に、特別な才能は必要ない。現に、みんな、ちゃんと日本語をしゃべっている。「よし、絶対、自分はできるんだ!」と、まず決めて、一歩一歩、挑戦することです。
11  留学について
 ―― 「海外に行けば、語学がマスターできる」と考え、海外留学を決意するメンバーも多くなっています。「高校生のうちに留学をすべきでしょうか」との質問をよく受けます。
 池田 海外に行き、視野を広げることは有意義でしょう。決して留学に反対はしない。しかし、「何のために行くのか」という目的観がないと、流されてしまう。風潮に乗って、「何となく」では長続きしないし、中途半端になってしまう。決して安易に考えてはいけない。また、あせる必要もないと思う。
12  ″学校英語″は意味がない?
 ―― 今の″学校英語″は意味がない、という声も多いのですが。
 SGI公認通訳 私自身、留学前はそう思っていましたが、それは大きな誤りでした。現地へ行っても、日本で文法の基礎などをマスターしていなければ、きちんとした英語はできるようになりません。留学すれば、たしかに、日常会話程度の語学力は身につきます。
 しかし、それ以上のものにはなりにくい。その程度なら、日本でも十分習得できるのです。
13  「以心伝心」は海外で通用しない
 ―― では、これだけ言われても「語学だけは好きになれない」――そういう友は、どうすればよいのでしょうか。
 池田 むずかしい質問だね。
 海外で「以心伝心」は通用しない。「わかってくれるだろう」と思ってはいけない。はっきり言葉で伝えないといけない。
 ただし、どうしても語学が嫌いであれば、語学以外にも、人間同士のコミュニケーションの方法はあります。たとえば、音楽をはじめ芸術もそうだし、スポーツもそうでしょう。「数学」だって「世界語」です。何かの技術をもっていて、尊敬されるということもある。要は「世界に通用する自分」になるために何か武器をもつことです。
 私の夢は、諸君が、全世界で、思いっきり活躍してくれることです。
 しかし、物ごとには順序がある。小説も「一ページ」「一ページ」と、順序よく読んでいかなければ、ストーリーがわからない。それと同じように、今は基礎をつくる時代です。ゆえに今は「開かれた心」をつくれ、そして「語学」に挑戦せよと訴えておきたいのです。

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