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池田SGI会長にインタビュー(国際通信…  

2009.10.20 スピーチ(聖教新聞2009年下)

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1  今こそ「核のない世界」に近付く時
 このほど、世界150カ国以上にネットワークをもつ国際通信社IPS(インタープレスサービス)が、「今こそ『核のない世界』に近づく時」と題し、池田SGI(創価学会インタナショナル)会長へのインタビュー記事を配信した。インタビューは、SGI会長が先月発表した提言「核兵器廃絶へ民衆の大連帯を」の内容を踏まえつつ、オバマ大統領が議長を務めた9月24日の国連安全保障理事会での「核不拡散と核軍縮に関する首脳級会合」の後に行われたもの。IPS国連総局が発行する「テラヴィヴァ国連」などで掲載されたほか、核軍縮に関わる国際機関でも注目を集め、CTBTO(包括的核実験禁止条約機関)準備委員会の公式ウェブサイトの「日刊ニュース紹介」のコーナーでも紹介された。ここで、英文で掲載されたインタビュー記事の日本語原文を紹介する。
2  具体的な行動に踏み出す努力を
 ──今年4月にオバマ大統領がプラハで、「核兵器のない世界」に向けたビジョンを提示しました。その一方、同じ演説の中で、「核兵器のない世界」が自分たちの生きているうちに達成できるかにどうかについての疑念を表明しています。この点について、どのように思われますか?
 池田会長は提言で、世界の民衆が「核兵器の非合法化」を求める意志を明確に表明していくこと、その声を結集して2015年までに「核兵器禁止条約」の基礎となる国際規範を確立することを呼びかけられていますね。
 核兵器廃絶に向けて方向転換を行い、本格的に前進できるかどうかという岐路に、私たち人類が立たされている今、問われるべきことは何か──。
 それは、核廃絶が実現可能かどうかといった次元ではなく、私たちが生きるこの時代に「核兵器のない世界」を実現するには具体的にどのような手立てが必要となるかを考えていく点にあります。
 私が今回の提言を通し、広く国際社会、とくに保有国をはじめ、核兵器に安全保障を依存する国々の指導者に問いかけたのは、次の一点でした。
 すなわち、核兵器をめぐる現在の状況と、未来の危険性を考慮した上で、核時代に終止符を打つために戦うべき相手は、核兵器でも保有国でも核開発国でもない。真に対決し克服すべきは、自己の欲望のためには相手の殲滅も辞さない「核兵器を容認する思想」だということです。
 私の師である創価学会の戸田城聖第二代会長が、52年前に訴えた「原水爆禁止宣言」の核心の一つも、そこにありました。
 ご指摘の通り、「核兵器のない世界」への挑戦の先頭に立つと表明したオバマ大統領が、その半面で、“自分の生きているうちに、その実現は難しいかもしれない”との留保を示したわけですが、保有国はもとより、すべての国の指導者たちが責任を共有して具体的な行動を起こすこと、そして何より、グローバルな民衆の連帯が指導者たちの行動をどこまでも後押ししていくことで、「不可能は不可能でなくなる」と私は確信しています。
 その意味でも、2015年までの5年間、とくにNPT(核拡散防止条約)の再検討会議が行われる来年5月までの間が、正念場となるでしょう。「核兵器のない世界」への橋頭堡を築くために、人類共闘の輪を広げることが今、強く求められているのです。
3  核兵器の禁止へ民衆の包囲網を
 ──今回の提言の中で、「核兵器禁止条約」採択にいたるまでの道のりは、軍事安全保障に関する既成概念が障害となって、決して容易なものではないと指摘されています。その上でもなお、人道的な理想が、軍事や利益追求の論理に対して優勢に立つ可能性があると予見しておられるのでしょうか?
 近年、人道的な理想が、軍事上の論理や国益を乗り越える形で、2つの画期的な軍縮条約を生み出しました。一つは、99年3月に発効した「対人地雷禁止条約」であり、もう一つは昨年12月に締結された「クラスター爆弾禁止条約」です。いずれも、NGO(非政府組織)が連合体を形成して国際キャンペーンを行い、軍縮に積極的な国々と協力し、条約成立に大きな役割を果たしたものでした。
 提言で、“非人道的兵器の最たる存在”である核兵器を禁止する条約の基礎となる国際規範の確立を呼びかけましたが、それが一筋縄ではいかないことは承知しています。しかし私は、次の2つの理由から、それは「決して不可能ではない」と強調したいのです。
 第1に、提言でも指摘した通り、「核兵器のない世界」の必要性を訴える声が、核兵器の脅威が拡散し、高まる中での現実主義的な判断として、核保有国の元政府高官の間からも数多くあがっていることです。
 私は、こうした現実主義的なアプローチと、従来の平和的・人道的なアプローチという、2つの潮流を協働させることによって、「核兵器のない世界」への突破口を開くチャンスを、必ずや生み出すことができると信じているのです。
 第2に、広島と長崎への原爆投下以来、64年にわたって、どの国も、どの指導者も、核兵器を実際に使用することができなかったように──かりに抑止論的な文脈における威嚇の意味合いは残されていたとしても──軍事的には核兵器は「いくら保有しても、ほぼ使用することができない兵器」としての位置付けが半ば固定化しつつある点です。
 こうした認識は、多かれ少なかれ、保有国の指導者の間で持たれているものではないでしょうか。
 ゆえに、核兵器禁止を現実のものとしていくためには、対人地雷やクラスター爆弾の禁止を実現させた時の取り組みを、はるかに上回る形で国際世論を高め、市民社会の意思を結集し、“核兵器禁止のための民衆の包囲網”を築いていくことが肝要なのです。

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