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各部代表協議会  

2008.8.15 スピーチ(聖教新聞2008年上)

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1  暑い中、本当にご苦労さま!
 未来のために、きょうも語りたい。学会創立80周年の2010年に向かって、永遠の勝利の土台を、ともに築いてまいりたい。
 あれは、1951年(昭和26年)の年頭のことであった。
 師匠・戸田城聖先生の事業は、最悪の逆境が続いていた。一部の債権者からは厳しく追及されていた。
 死をも覚悟された、わが師に、23歳の私は、ただ一人、師子奮迅の力で、お仕えした。
 自らの病気とも闘いながら、阿修羅のごとく、一心不乱に奔走し、わが師をお護りする一日また一日であった。
 その悪戦苦闘の渦中である。
 朝早く出勤なされた先生は、「この本を君にあげよう」と言われ、一冊の本を私に手渡された。
 鮮やかな赤い布の装丁であった。
 その一書こそ、イギリスの作家ホール・ケインの革命小説『永遠の都』であった。
 小説の舞台は、西暦1900年のイタリアの都ローマ。
 若き革命児たちが、あらゆる試練を乗り越え、勝ち越えて、「民衆勝利」「青年勝利」の新時代を開き切っていく、壮大な物語である。
 この書は、1901年(明治34年)に書き上げられた。
 日本では、翻訳が1930年(昭和5年)の7月20日に改造社から発刊された(戸川秋骨訳)。創価教育学会の創立の直前である。
 師と仰ぐ牧口常三郎先生を、若き戸田先生が厳然と支えて、学会創建の奮闘を重ねている時であった。
 わが生命に刻まれた一書を、戸田先生は愛弟子の私に、後継の記別のごとくに託されたのである。
 先生は言われた。
 ──君が選んだ同志に、この本を読ませてあげてよい。みんなが読み終わったら、感想の発表会をもとうよ──
 私は電光石火、13人の同志を選び、表紙の裏に名前を言いて、一人2、3日ずつで読了し、回し読みをした。そして、本を手渡されてから1カ月余の2月8日には、戸田先生を囲んで、この書を通して、皆で誓いを語り合ったのである。
 これが「水滸会」の淵源となった。さらにまた、青年部の結成への出発も、ここにあった。
2  民衆とともに民衆のために
 「政治」の権力と「宗教」の権威──この二重の圧制に苦しむ民衆を断じて救わねばならないと立ち上がったのが、主人公の青年、デイビッド・ロッシィである。
 青年ロッシィは、「人間の共和」という理想の旗を高らかに掲げ、勇敢に独裁者に立ち向かった。
 彼は、民衆を愛し、民衆とともに、民衆のために行動しゆくリーダーであった。その瞳は、理想に輝き、全身には大情熱がみなぎっていた。
 小説には、こう描写されている。
 「それは燃えつきてやまない偉大な心を持った人間の表情であり、その人聞性に対する共感は炎となって燃えさかるものだった。そして世を救おうとする熱情は燎原の火にちがいなかった」(新庄哲夫訳『永遠の都』潮文庫。以下の引用も)
 諸法は実相である。
 広布の指導者は、まさしく妙法蓮華経の当体として、生き生きと若々しく、わが生命を光り輝かせていくことだ。
 〈今月12日、名誉会長と会談した、アメリカのジョン・デューイ協会のガリソン会長は感嘆していた。
 「戸田先生との出会いを語られる池田先生の目の輝きは、(名誉会長が戸田第二代会長と初めて出会った)19歳の青年の目の輝きでした」と〉
3  新しい声から新しい前進が
 非暴力を掲げるロッシィの最大の武器は何か。それは「言論」であった。
 勇み集った民衆に、彼は声も高らかに叫んだ。
 「今夜、われわれがここに集まったのは、およそこの世で最も強力なものに──いかなる軍隊よりも、いかなる下院よりも強力なものに、いかなる国王よりも絶対的な力を持つものに──つまり、世の道徳的な支持と全世界の世論に訴えるためであります」
 誠実に語る正しき道理が、人間の心を打たないはずがない。
 命を賭した信念の正論が、民衆の生命に響かないはずがない。
 ロッシィは、「声」を力にして、叫び戦った。戦い叫んだ。
 対話の波で、一人また一人、友をつくり、味方を広げた。
 弁論の剣で、敵を責め、邪悪を倒した。
 そして、同志もまた「声」をあげて戦えるように励まし、勇気と確信と執念を贈っていったのである。
 彼は訴えている。
 「勇敢であれ。自信を持て。忍耐強くあれ」
 「諸君の叫び声は世界の果てまでとどろきわたるだろう」
 仏法では「声仏事を為す」と説く。この「声」は仏様の呼吸であり、音声である。「声」によって仏様の仕事を為すことができるのである。
 ゆえに、リーダーは「声」を惜しんではならない。「声」の限りを尽くして、語りまくり、しやべりまくっていくことだ。
 蓮祖大聖人は、あの重書「諸法実相抄」を「力あらば一文一句なりともかたらせ給うべし」と結ばれている。
 「新しい前進」──それは特別なことではない。「新しい息吹」で、「新しい声」を発するところから始まるのだ。
 いよいよ各地で、勢いよくスタートを切る会合が行われる。
 出発が肝心である。リーダーは、よく打ち合わせをして、来てくださった方が元気になるように、いい話をすることだ。全力をあげていただきたい。

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