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日蓮大聖人・池田大作

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「霊鷲山」と「彼岸」を語る  

2006.9.17 スピーチ(聖教新聞2006年下)

前後
1  弟子は命懸けで師匠を守った
 私の青春は、恩師・戸田先生に捧げた青春であった。
 19歳で恩師に巡り会い、21歳の時、恩師の会社にお世話になった。以来、まっすぐに恩師に仕え、恩師のために生き抜いた。
 戦後の混乱のなかで、戸田先生は事業に失敗され、莫大な借金を背負われた。身も病んでおられた。絶体絶命の危機であった。
 この厳しき秋霜の時代に、ただ一人、先生をお守りし、一切の逆境を跳ね返していったのが私である。深夜であろうが、緊急の時は、隼のごとく先生のこ自宅にうかがった。先生の病状を案じて、一晩中、待機したこともあった。
 今では想像もできないと思うが、本当に峻厳な師弟であった。
 ある時、先生は、うれしそうにおっしゃった。
 「私には君がいる。本当の弟子がいる。だから絶対に何があっても安心しているんだ」
 また、先生から「私のそばにいてくれ」と言われて、私は、夜学に通うことも断念した。
 しかし、そのかわりに、先生は、残された全生命力を振り絞って、弟子の私に万般の学問を個人教授してくださった。その魂の薫陶は、師の命果てる寸前まで続いた。
 師匠が命をかけて育てた弟子であった。師匠を命をかけて守った弟子であった。
 先生が涙ながらに語ってくださったことが忘れられない。
 「君には苦労ばかりかけてしまった。病弱であるのに、死を決意してまで私のために戦ってくれた。永久に忘れないよ。君の功績は大聖人が全部、見通しておられるよ」
2  世界の識者との対談集は「50」に
 先日、アメリカ・ソロー協会の知性との語らいをまとめた『美しき生命 地球と生きる』が発刊された(毎日新聞社刊)。世界の識者との42点目の対談集である。
 さらに現在、複数の対談を継続している。そして、この秋、「東洋学術研究」誌上で連載開始となるアルゼンチンの人権活動家エスキベル博士(ノーベル平和賞受賞者)との対談をもって、50点の対談が世に出ることになる。
 世界の識者との対談の実質的なスタートは、約35年前のイギリスのトインビー博士との語らいが最初であった。
 「人類の直面する基本的な諸問題について語り合いたい」──このように博士のほうから対談を希望されたのである。
 語らいは、文明の未来、生命論、環境論、女性論、国際情勢、教育と宗教など多岐にわたった。
 2年越し、40時間に及んだ対談が終わった時、私は、「トインビー先生の生徒として、何点ぐらいとれたでしょうか」とうかがった。
 トインビー博士は、にっこりとして言われた。
 「私は、ミスター・イケダに最優等の『A』を差し上げます」と。
 私のすべては、「戸田大学」で、約10年間、毎日のように訓練していただいたおかげである。
 戸田先生は、私のいないところで、このようにも語っておられたようである。
 「戸田門下生で、大作にかなう者はいない。どこに出しても恥ずかしくない。どんな指導者と議論しても、どんな学者と議論しても、負けない男をつくっておいたよ」と。ありがたい先生であった。
 これまで、私は、多くの識者と語り合ってきたが、洋の東西を問わず、一流の人物の結論は、「師弟しかない」であった。
 師弟のあるところに、本当の人生があり、真実の永遠性があり、究極の勝利がある。
3  正しい人生を 勇気の人生を
 創価学会の根本の精神は、日蓮大聖人の御遺命である広宣流布のために、命をかけて戦い抜かれた牧口先生と戸田先生の師弟の精神である。
 この師弟に流れ通う広宣流布への「不惜身命」の心がなくなったならば、今は、いかに発展しているように見えても、学会の前途は危うい。
 仏法は、仏と魔との連続闘争である。決して甘いものではない。’
 牧口先生、戸田先生のご精神を、今こそ、守り抜いていく時である。最高幹部は、命あるかぎり、求道心を燃やさなければならない。それが本当の学会精神である。
 私は、戸田先生のために命を捨てようと決めていた。
 それを先生は察知され、「俺の体をなげうってでも、大作を守る」と言われたのだ。
 そして、先生から受け継いだ創価学会の発展のために私は、今日まで、動きに動き、祈りに祈り、書きに書いて、骨を粉にして働いてきた。
 本当の清らかな、本当の師弟に徹した信心を、私も妻も貫き通してきた。
 全世界に道を開いた。全世界に恩師の平和の精神を宣揚した。
 恩師の敵を討った。私は、戸田先生のただ一人の真正の弟子である。
 先生は遺言するように語られた。
 「私は何百人、何千人もの弟子を見てきたが、本当に誠実に私を支えてくれ、創価学会に尽くしてくれたのは大作が一番である」
 皆さんには、いい人生を生きていただきたい。正しい人生を生きていただきたい。勇気ある人生を生きていただきたい。
 その根本の道が「師弟の道」である。
 私も、さらに本腰を入れて、本当の学会精神を語り残しておきたいと決意している。

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