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日蓮大聖人・池田大作

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中等部結成10周年に寄せて 地球家族の理想実現を

1975.1.5 「池田大作講演集」第7巻

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1  中等部結成十周年、まことにおめでとう。次代を担う中等部の皆さんの成長を心から願う一人として、おおいなる喜びにたえません。十年といえば、諸君の先輩はすでに中等部で得た生命の財産をひっさげ、社会の第一線で活躍しております。また大学生として、新しい世紀へと向かう創造の学問に、身をおいている人もいるでしょう。
 皆さんは、こうした伝統と歴史のうえに、更に二十一世紀へ向かって、大きく羽ばたいていただきたい。やがてくる生命の世紀に、中等部は年輪を幾重にも刻みつつ、いちだんと誇りある使命を担ったといわれることでしょう。そのためにも平凡でもいい、しかし堅実に、進歩と成長の姿勢をもった日々のなかに、自らにふさわしい人生の骨格ができあがっていくものです。それを確信して、いまある日々を諸君の人間形成と信仰錬磨の日々にしていっていただきたいのです。
 私はよく世界各国を旅行します。あとから、それらの国々の印象を思い返すことがよくあります。すると心のなかに大きく残っているのは、各国の少年少女の元気いっぱいな希望あふれた姿のかずかずであることに気がつきます。
 中国の「少年宮」で、モスクワの「ビオネール宮殿」で、ロサンゼルスのマリブ海岸やペルーのリマで、私は多くの“未来からの使者”と楽しみ出会いをもちました。
 そして深く澄みきった瞳をのぞくたびに、力強く励まされる感すらおぼえました。それは、将来の地球の運命を担って進む皆さん方の世代の瞳の奥に、未来に対する鋭い責任と使命の光を見つけたらにほかなりません。
 これからの時代といっても、決して安穏なばら色につつまれたものでないことはご承知のとおりです。現在でも地球上三十八億の人口のうち少なくとも四億六千万人は、栄養不足に苦しんでいるといわれます。最近の天候不順は世界各国に凶作、不作を続かせ、加えて南北のアンバランスというジレンマのなかに、世界の食糧事情は緊迫するばかりです。それに加えてすっかり慢性化したインフレーション。石油資源もあと三十年ほどの寿命しかない。公害の影響は時がたつにつれて深刻に人体にあらわれ、明るい材料を探すのに苦労するほどです。
 みなさん方が生きゆく時代は、そうした全人類が取り組まなければならない大きな課題が、山積みしていることを知っていただきたいのです。といっても、決して私は悲観しているわけでも、絶望しているわけでもありません。それどころか、地球に見せかけだけではない真の平和、繁栄を築いていくのはこれからであると思っています。
 地球誕生から今日までを一日と計算すれば、人類の歴史はわずか二分しか経過していないのです。この段階で人間は挫折してしまうのか、それともこの苦しい状況を大転換できる英知が発揮できるかどうか、こわめて重要な分岐点に立っているといえます。
 この方向を決定していくのは皆さん方です。これまでも理想社会、ユートピア実現のため、多くの方策が考えられました。経済体制を変革する案もその一つです。その時代の人類の英知を結晶させ、努力を続けてきました。しかし、まだ理想ば実現しておりません。
 それはどうしてでしょうか。ここで考えなければならないことは、どんな立派な社会体制ができても、それを担う人間を忘れては、なんの仕組みかということです。人間の生命とは――。このテーマの解明なくして体制のみ論じても、そこに未来を開く光明はありません。この人間生命に洞察の目を開き、徹底的に解明へと向かったのが仏法の出発であり、終着でありました。
 三千年前、釈尊が出家するにいたったエピソードがあります。まだ王子だったころ、遊びに出ようとすると、東門では老人を、南門では病人、西門では死人を見たというのです。最後に北門で出家した僧の姿を見て、考えるところがあったといいます。これは「四門遊観」という説法です。仏法が「生老病死」という、人間の生きるうえでの根本的命題に取り組んでいることをよく物語っていると思います。
 私たちはこうした東洋哲学の根本を学び、実践に移しております。この東洋の光が、仏法が幾度となく人間の危機を救った歴史が物語るとおり、曲がり角にきた現代文明の行き詰まりの解決に大きく寄与することはまちがいありません。樹木の繁茂を例にとってみても、枝葉に目をうばわれて、幹や根を忘れてはならないのと同様ではないでしょうか。
 中等部の皆さんは、この仏法哲理を根本に、文明の方向の転換と、人類の協力態勢による地球家族の理想実現をめざしてください。といっても、それはいつか突然実現できるものでは決してありません。毎日毎日、着実な歩みの結果、そうなるわけです。
 中学時代は人生の若芽の季節です。しっかり基盤を養成する時といえます。この年代を無駄にしたり、自分の弱い心に負けて汚したりすることのないようにしたいものです。毎日を着実に、特に朝の勤行で発心、決意し、夕の勤行で静かに一日を取り返るような、悠々たるなかにも、美しく明るい日々を送ってください。そして、読書にスポーツに、そして語学のマスターにと、おおらかに伸びのびと成長してください。その延長線上に、あなたの将来があるのです。自己に厳しく対決し、失敗を恐れることなく、勇気をもって目標に、諸難に挑戦してほしい。いまのそうした努力の積み重ねなくして、生涯を貫く筋金、学会精神を会得することはできません。
 最後に、あなたの健全なる成長を、朝晩心より祈っております。

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