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日蓮大聖人・池田大作

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創価大学第1回卒業式 正しき信念で風波生きぬけ

1975.3.22 「池田大作講演集」第7巻

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1  若き英才の諸君に、ひとことごあいさつを申し上げます。陽光燦たる本日は、諸君にとっては人生の春とも申すべきめでたい卒業式であります。しかも、本校といたしましては、記念すべき第一回の、つまり初の卒業式であります。
 このことについて、私は創立者といたしまして、心の底から喜びを感じておりますま。満場の諸君、そして諸先生、ならびに職員の方々、さては父兄の皆さま方、まことにおめでとうございます。心からお祝い申し上げるものでございます。(拍手)
 巣立ちゆく諸君の四年間にわたる真摯な修学の努力に対しましては、深く敬意を表明し、またそのような訓育くださった先生方のご恩に対しましては、卒業生、ならびに父兄ともども厚く御礼申し上げるものであります。ほんとうにありがとうございました。(拍手)願わくは、四年間を土台として、見事なる校風とすばらしき伝統とが立派に築き上げられますよう、心からお祈り申しあげるしだいであります。
 大学院に進む人、就職する人、海外へ留学する人等と、それぞれ進路は違うでありましょうが、本日、このキャンパスから旅立っていく諸君に、私は「たくましき福運の青春であれ」と呼びかけてやみません。
 私の信ずる仏法には「霊山一会儼然として未だ散らず」という一つの原理がございます。これは、くだいていえば、散ってなおかつ散っていない、という不思議な原理でありますが、卒業して散っていく諸君もまた、生涯「創価大学の一会儼然として未だ散らず」とこの席において盟約してはどうかと、提案申し上げるものでありますけれども、諸君、いかがでありましょうか。(拍手)
 この祝典を通過することによって、一人前の立派な独立社会人となる諸君に、私は懐かしき私の恩師の言葉をもってはなむけとしたい。
 それは「社会に信念の人を」という提言であります。いまから二十年前の社会に対しての提言であり、今日のような働き過ぎが問題になったり、職場管理の合理化からきた人間疎外現象が問題になったり、当時とはかなり様子の違った点がありますが、それにしても、この恩師の説は、だいたい現在にもあてはまると、私は思っているのであります。
 社会に出たての青年時代は、なにか未知へ不安心理をかかえてはいるが、それにもまして希望に燃え、張り切っているものであります。ところが“社会慣れ”して中年に近づくと、いわゆる“ものたりない”という姿を見せるようになってくる。生涯の信念というものを持ち合わせていない人は、そうなってしまうようであります。どうか諸君は、正しく深い信念を根底に堅持し、それによって、この風波の高い大海にも似た実社会を生きぬかれんことを、ひたすら私は祈ります。
 さて、今度は別の話を、少々申し上げたい。諸君はこの最高学府において、さまざまな高い学理を身につけたでありましょう。それらの学問というものは、過去の実社会を見直した“モデルの社会”について、分析、比較、総合という手続きをふみ、それによって得た諸法則を体系化したものであります。
 端的にいえならば、それは偽なるものを排して、真なるものを集めてまとめあげたものであります。すなわち、真偽二値の“二値論理の世界”そういうモデル社会が、諸君の学生生活の場であったわけであります。
 ところが、今後の生活の場である実生活は、いままでのモデル社会とは、だいぶ異なってまいるのであります。なにがどう異なるのかといえば、学理以外の人間関係が、つまり対人関係というものが、じつに大きな力をもってくるのであります。
 そのうえに、学問のモデル社会が“真偽二値論理”の世界であるのに対して、実社会は、複雑な多値論理、つまり様相論理の世界であり、二値論理に慣らされた学徒的な目には、異様にみえる事柄が充満しているのであります。
 また、それにともなって、若い諸君の正義感とは衝突する事柄を、いやでも経験せざるをえなくなってくるのであります。ゆえに、対人関係に対しては、誠実さが必要であり、社会の異様さに対しては、強い忍耐力で立ち向かうことが必要となってくるのであります。
 どうか、諸君、このことを決して忘れないでいていただきたい。かつて、ある年の東大の卒業式において、当時の総長がその訓辞のなかで「社会に出たら決してタダ酒を飲むな」と、強調したことがあったそうであります。心ない人ならば、総長ともあろう人が、大事な式典でなんという卑俗なことをいうか、と思うかもしれませんが、ほんとうは決してそうではない。私は、これはじつによい訓辞であったと思うかもしれませんが、ほんとうはむっしてそうではない。私は、これは実践によい訓辞であったと思うのであります。
 私は恩師から次のようなことを教わりました。それは「人事、金、異性」という三点であります。人生の成功、不成功のカギが、この三つにかかっているという意味であります。だれでも凡夫でありますから、社会のいろいろな誘惑にはとかく負けやすい。「人事、金、異性問題」――この三つはほんとうに心すべきことだと、私は思う。
 この点に照らし合わせてみても「タダ酒を飲むな」という訓辞は立派なものであると思います。また実社会はなんといっても、利潤追求社会でありますから、拝金乞食になりやすい。金銭関係には断じて正義感を崩さずにあたるべきであります。
 また異性問題は、結婚問題と直結しており、自分ばかりか、子孫まで左右する大事な案件でありますから、これまた慎重に臨んでいただきたいのであります。
 諸君の大半はサラリーマンになるようでありますが、自由業と違ってサラリーマンの場合は、会社の人事でポストを左右されるので、おうおうにして職業と個性の一致が得られないというハメになることが多い。そのために会社をかんたんに辞めてかわる人もあるし、人生の敗北者になる人もいる。というように、これからの諸君の前途に覆いかぶさってくるのが、人事問題なのであります。しかし、たとえそうであったとしても、長いあいだには、いつのまにか自分にふさわしいポストが獲得されるものでありますから、「なんであれ、これも人生修行の一つ」と思って、がんばってみることであります。
 また大学を出れば、今度は自分で自分を教育する生涯教育のコースに入るわけであります。それには何歳になろうとも、向学心が衰えないこと、これが条件であります。そして必要に応じて学び、仕事のうえと教養に役立てていく、それが理想的な態度であります。
 学ぶのは充電であり、役立てるのは発電であります。一生、この充電、発電を絶やさずに繰り返していけるようになったならば、その人は必ず人間の勝利者になっていくことは間違いないでありましょう。
 ともあれ、二十一世紀の担い手たる前途有為の諸君、私は、諸君の生涯の健康そして長寿を祈って、晴れの門出へのお祝いとするものであります。では、未来に向かって勇ましく第一歩を踏み出してください。(大拍手)

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