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日蓮大聖人・池田大作

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2 ガンの予防と治療  

「健康と人生」ルネ・シマー/ギー・ブルジョ(池田大作全集第107巻)

前後
1  原因の大半は食生活の偏りと喫煙
 池田 多くのガンがもし早期に発見されれば、治癒率はかなり上昇すると言われています。
 そこでお聞きしたいのは、最近のガンに対する診断法の状況についてです。
 一般の人は、検査と聞いただけで躊躇しやすいものですが、その内容が明確に理解できるものであれば、検査に向かう心も軽くなると思われるからです。
 シマー 早期発見・診断は疾病予防のあり方のうち、二次予防にあたるものです。われわれは、一般的に、予防のあり方を一次予防と二次予防の二つに分けています。
 一次予防のねらいは、疾病が起こる前に、その原因と要因を減らすものです。ガンの場合で言えば、その原因につながるいくつかの要素が判明しているので、それに対してとれる手段を見つけ、ガンの発病を避けようとするのが第一次予防になります。
 まず、この原因と要因を減らす一次予防からお話しします。
 ガンの原因となるいくつかの要素を重要なものから順に列挙すると、発ガン性化学物質(このなかにはタバコも含まれます)、工業用化学物質、紫外線、そして、まれなケースとして放射性元素やX線、乳頭腫やヘルペス(疱疹)、あるいはエイズ、エプスタ・イン・バー(EB)などの伝染性のウイルス、食生活、遺伝――になります。
 池田 日本でもいちばん指摘されるのがタバコとガンの関係性です。
 シマー 今日、われわれは、タバコとガンないし心臓血管系の病気との因果関係について知識をもっています。先進国では、ほぼ全市民がその点をわきまえていると言えるでしょう。
 しかし、その危険性を知りながら、それでも平気で喫煙する人たち、あるいは喫煙の習慣に誘引されていく人たちに、どのように介入したらいいのかわかりません。そういう人たちのなかには青少年、とくに若い女性もいます。
 開発途上国の住民などは、広報やライフスタイルについての記事などに疎遠で、彼らがどのくらい喫煙のリスクについて知っているかは定かではありません。
 過剰な日光照射による皮膚ガンについては、予防対策の観点から具体的な事例記録が出ています。皮膚ガンは増加しており、なかにはかなり深刻な悪性の黒色腫も見られます。また、さして深刻ではないガンが、比較的ひんぱんに発見されるケースもあります。この場合の一次予防は、明瞭な証拠を示す衛生教育で、内容もわかりやすいものにしています。
 池田 イギリスのガンの疫学者であるドール博士らは、アメリカ人のガン死亡に対して各種の危険因子がどのように関係するかをリポートしていますが、それによると、食生活が三五パーセント、タバコが三〇パーセントとなっています。
 発ガン原因の大半を占めるじつに六五パーセントが、「食生活」と「タバコ」に集中していることになります。こうしたことから、“食事、喫煙などの生活習慣やライフスタイルを工夫することでガンの制圧は可能である”と、日本の予防がん学研究所所長であった平山雄氏は述べています。
2  ガンを防ぐための十二カ条
 池田 ガン予防の心得として日本でもっとも一般的なものに、国立がんセンターが制定した「がんを防ぐための十二カ条」があります。
 〈がんを防ぐための十二カ条〉
 1、バランスのとれた栄養をとる
 2、毎日、変化のある食生活を
 3、食べすぎをさけ、脂肪はひかえめに
 4、お酒はほどほどに
 5、タバコは吸わないように
 6、食べものから適量のビタミンと繊維質のものを多くとる
 7、塩辛いものは少なめに、あまり熱いものはさましてから
 8、焦げた部分はさける
 9、かびの生えたものに注意
 10、日光に当たりすぎない
 11、適度にスポーツをする
 12、体を清潔に
3  同様のリポートが、アメリカのガン協会からも『栄養とガン』と題して提出されています。これはガンにならないための食生活を勧告したもので、たとえば、肥満を避ける、脂肪の総量を減らす、繊維の多い食品を多くとる等々、そのまま日本にも当てはまるものが多いようです。
 シマー すでに論じてきたように、もしかしたらガン生成の原因になるのではないかと思われるような有機物を発見し、それに対抗する手段をとるのが一次予防です。
 日本の国立がんセンターが制定した「がんを防ぐための十二カ条」は、一次予防でとるべき重要な手段の要点をカバーしています。食生活と喫煙(喫煙者自身とその煙を二次的に吸引する人を含めて)の影響はなかんずく重要であるとのご指摘は、まことに当を得ています。
 食生活の改善がガンの予防に一役買っていることを明かす疫学の研究が最初に出たのは一九六〇年代で、以来、この種の研究は急速に進んでいます。今日、食生活が乳ガン、食道ガン、子宮ガン、前立腺ガン、そのほか喉頭ガンや咽頭ガンなどの形態のガンにあたえる影響について、多数の事例を引用した研究成果が発表されています。しかし、それらのあるものを子細に見てみると、ガンになる、あるいはならない食生活のあり方について、必ずしも結論の裏づけが一致せず、意見も大きく分かれているのが実情です。
 食品添加物についても数多くの研究があります。香りや色、見かけをよくするための添加物は、意図的に混入するか付随的に入るかは別として、二千五百種類
 くらいあると言われています。このように膨大な数になると、研究分野は拡大する一方です。ある物質の無害を証明するためには、長い年月にわたる研究が必要です。
 一般の人たちは、新聞、ラジオ、テレビといった媒体を通じて、あるいは消費者グループの商品品質保証要求運動を通じて、問題の所在を知らされていますから、食品に有毒物質混入の可能性、一部の食品添加物に発ガン物質混入の可能性があることは一般的知識となっています。しかし、発ガン物質そのものについては、あまり知られていません。というのも、市場にはつねに新しい物質が出回り、それらを一つ一つ取り上げて実験するのには時間と費用がかかるからです。
 池田 たしかにそうでしょうね。
 シマー 脂肪分の多い食生活は肥満、動脈硬化、心筋梗塞、消化管のガンをまねく可能性があります。栄養士の勧めにしたがうのがよいでしょう。自然食を用いてつくった料理で、あまりしつこいソースを使わず、脂肪分の少ない食事をとるようにするのは良いことです。栄養士は、毎日の食物摂取で脂肪を三〇パーセント以下におさえること、脂肪の多いものを食べないようにする習慣をつけることを勧告しています。しかし、西欧諸国での食事では、摂取するカロリーの四〇パーセント以上が脂肪となっています。
 最近、直結腸ガンに対する防御としてセルロース繊維が入った食事をとることの重要性を、バーキットが指摘して関心を集めました。また、生野菜と果物の摂取量をふやすのがいいと一般に言われています。しかし、断定的な結論はまだ出ていません。

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