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「幸福の追求」は人生と教育の目標  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

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1  アタイデ 良識的かつ能動的で、多くの人が満足できる確固たる民主主義を形成するためには、民衆教育がその基礎となることは、多く語られるところです。その民衆教育について、米国の例を引き合いに出して考えますと、トーマス・ジェファーソンは次のようにつづっています。
 「国民の大衆教育に関心が払われることを期待する。欠くことのできない自由を擁護することは、大衆教育に依存していると私は確信している」と。
 偉大な政治家にして思想家であったジェファーソンは、生まれたばかりの米国の民主主義の命運を、人権と自由を完全に擁護できるか否か、そして、民衆の教育レベルがどうかという点にかけたのです。そこに民主政府を維持する根本があったからです。
 池田 ジェファーソンは、アメリカ独立宣言の起草者として、人類の歴史に大いなる足跡を残しました。ジョン・ロックが権利の内容としてかかげた「生命・自由・財産」を、彼が「生命・自由・幸福の追求」と改めたことは、独立宣言の意義をいっそう深め、普遍的なものにしました。
 「幸福の追求」――それは人権の内容であるとともに、教育の目的でもあります。牧口会長は「人生の目的をあえてひと口でいえば、それは『幸福』である」と考えていました。さらに、幸福とは「自分だけがしあわせであれば他はどうでもよいという利己主義の幸福ではなくて、その中心に自分がいるにせよ、われわれの生活は社会と共存共栄でなくては、しばらくでも真の安定は得られないということを意識しての上に求むる幸福」(『牧口常三郎全集第五巻』「創価教育学体系」第三文明社)としていました。
 アタイデ 人を教育するということは、一人一人に人生の困難を乗り越えるための土台をつくることです。とともに、人間が他の人と仲良く社会、地域の繁栄を考え、めざし、ともに暮らしていくために教育があるのです。
 池田 牧口会長は、「教育の目的は、人生の目的と一致しなければならない」と主張しています。すべての人々が価値創造の主体者である――これが、人間の生きる権利を最大限に尊重する教育の何よりの証でしょう。
 アタイデ アメリカ合衆国の建国者の一人であるジョン・アダムズは、富裕層から貧困層まで、すべての社会階級へ教育を普及させることが、国をうまく治め、その統一を維持するための不可欠の条件であると主張しました。
 歴史家たちは、米国の歴史上、ひときわ輝くこの時代に、政府がすべての教育段階において、高水準の教育を施すために努力したことを特筆しています。
 池田 文字どおり、「国家百年の計は教育にあり」といえましょう。一つの国家の偉大さを表すものは、「教育立国」であるか否かであるといえます。
 ジェファーソンの偉大さは、独立宣言でアメリカ精神の原点を示しただけでなく、みずから教育の分野でも大きな貢献をしたことです。
 アタイデ そうです。そのとおりです。ジェファーソンは、彼自身が計画し、デザインしたバージニア大学を設立したとき、八十歳を超えていました。同大学は建築学上、「全国で最も美しく、かつ調和のある建物」といわれています。
 ジェファーソンを米国の最も重要な人物の一人とするのは、その功績はもとより、みずからすべての時間を教育に捧げたことがあげられます。西部において大衆教育のための用地として、必要な土地を寄付させる政令をつくったのも彼でした。議会図書館を設立し、その発展のために労力と資金を費やし、世界的に評価されるまでにしたのも、彼であることを忘れることはできません。
 「民主主義の価値」とは、国民のすべての層に無償かつ無差別に提供される教育の質の善し悪しと、規模の大きさにより測られるものといえます。

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