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「言葉」を武器としての闘い  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

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1  池田 「人権の王者」アタイデ総裁とお会いでき、光栄です。また、「ラテン・アメリカ最高峰の知性の殿堂」ブラジル文学アカデミーにお招きいただき、ありがとうございます。
 アタイデ お待ちしておりました。会いたい人にやっと会えました。池田SGI(創価学会インタナショナル)会長は、この世紀を決定づけた人です。ブラジルと日本の力を合わせれば、不可能はありません。二人で力を合わせ、人類の歴史を変えましょう。
 池田 アタイデ総裁は同志です。友人です。世界の“宝”の人です。総裁は「池田世界人権宣言」を推進したお一人である。世界の歴史の証言者であり、創造者です。
 アタイデ 私たちが「世界人権宣言」の作成に取り組んだとき、皆、笑っていました。信じる人など、だれもいなかった。
 「そうした“宣言”を、人類はいくどとなく作ってきた。だが、それが守られたことは、一度としてなかったではないか」と。
 池田 よくわかります。ちょうど同じころ、私の恩師戸田城聖創価学会第二代会長が「地球民族主義」を唱えたときもそうでした。「地球民族主義」とは、すべての人々が、国家や民族の枠を超えて、同じくこの地球に生きる「人間」として、連帯していこうという主張です。「人類意識」「世界市民」の概念と相通じる発想にもとづいていますが、当時は、まったく評価されませんでした。「夢物語」にすぎないと――。
 しかし、今では、その先見性が光っております。
 これからは、「人権」の時代です。「人権」が、人類と世界の最重要の課題です。二十一世紀のために、語り合いましょう。
 アタイデ 人権の問題について、ここまで理解してくださっているSGI会長と対話できるのは、本当にうれしいことです。
 池田 アタイデ総裁は、「人権とは、政治体制や国家制度より優先されるべきものである。それは、人間から生じる最も崇高な、決して譲渡することができない価値であり、人間に人間としての特性を与え、精神的な価値をもたらすものである」とつづられております。
 人権の本質を鋭くついたお言葉です。最も根本的なことは、一人の人間の尊厳です。一切は、そこから出発しなければならないでしょう。
 アタイデ おっしゃるとおりです。「人権」についての対話では、「差別に対する戦い」が中心になると思います。すべての人間は、平等です。いかなる差別も許されない。絶対に許すことはできません。
 池田 釈尊の弟子たちが、仏法にめぐりあえた喜びの言葉を集めた経典『テーラガータ』には、「〔われわれは〕すべて、尊い師(ブッダ)の子であり、ここにはむだなものは何も存在しない」とあります。どのような人も尊い仏の子であり、だれ人も平等に「むだなもの」ではなく、“かけがえのない”尊厳なる者であることを、高らかに宣言しています。
 また、私どもが信奉する日蓮大聖人の仏法では「一人を手本として一切衆生平等なること是くの如し」(「三世諸仏総勘文教相廃立」日蓮大聖人御書全集、以下、御書と略記)と、一人の尊厳にもとづいて、すべての人の尊厳を見いだす、根本の「平等」の原理が示されています。
 ともあれ、「世界人権宣言」の制定から四十五年の佳節を刻む意義深き年(一九九三年)に総裁と語り合えることは、本当にうれしい。
 アタイデ 「世界人権宣言」の精神を最も明快に、現実の行動のうえに翻訳し、流布してくださっているのは池田会長です。作成した人間以上の功績です。人間は「行動」です。とともに、「思想」が大事です。
 池田 総裁こそ、まさに「行動の哲学者」です。そこに、私は感動するのです。
 アタイデ 私は、ほぼ一世紀を生きてきました。会長が生まれたとき、私は三十歳になろうとしていました。すでに世の中を経験し、さまざまなことを学んでいました。
 しかし、これまで生きてきて、これほど「会いたい」と思った人は、初めてです。それが実現したのです。これほどの喜びはありません。会長は「すべての宝をもつ人」です。「すべての正義をもつ人」です。
 池田 恐縮します。
 アタイデ 会長は、人間学と人間性の人であり、精神の指導者です。世界の命運は、会長の行動とともに、しだいに大きく開かれてきました。人類の歴史を転換している方です。みずからの行動で構想を現実化し、具体化してこられた。
 池田 総裁の人生は激動の二十世紀とともにありました。そして今、総裁に「二十一世紀への人類の道案内者」としての輝きを見る思いがします。「人間の王者」であり、「思想の王者」です。
 アタイデ 「新しい世紀」が、まもなくやってきます。それは、ブラジルと日本、そして世界にとっての「新しい時代」が、やってくることを意味するのではないでしょうか。
 池田 そうです。「新しい時代」をつくるために総裁は戦ってこられた。私も同じです。目的は、人類が幸福に生きる「新しい時代」を開くことです。
 アタイデ きょうは、一人のブラジル人と、一人の日本人の出会いであるかもしれません。しかし、私は思うのです。二つの民族が、今日、私たちを通して出会っているのだ、と。
 どちらにも同じ「未来」がある。その共通の「未来」へ、ともに手をたずさえて進もうではありませんか。
 池田 総裁の言葉には、「哲学」があり、「信念」があります。「正義の雄叫び」を、「音楽の響き」を私は聞きます。今の言葉を、私は、後世の人類への「遺言」と受けとめます。
 アタイデ 「言葉」を意味するラテン語の「ウェルブム」とは、同時に“神”を意味します。私たちは、この崇高なる「言葉」を最大の武器として、戦いましょう。
 池田 仏典には「声仏事を為す」(「御義口伝」)とあります。私たちの声が、人々に正義を示し、正しい道を進む勇気を与える。すなわち、“仏の振る舞い”となることを説かれています。
 また、「ことばと云うは心の思いを響かして声を顕す」(「三世諸仏総勘文教相廃立」)ともあります。わが心にいだく信念、理想を顕した声の響きこそ、時代を変えていく力でありましょう。

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