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日蓮大聖人・池田大作

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若者たちの新たな胎動  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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1  若者たちの新たな胎動
 ここで、とくに勇気づけられる現象は、若者が積極的な役割を果たしてくれていることである。旧来、年長者たちから格闘技の技術を教え込まれてきた若者たちは、いまでは逆に、年長者たちに平和とは何たるかを教えている。現実の社会をみても、若者たちは平和運動と自然保護運動の主体として活躍している。こうした若者たちの動きは、一方ではようやく表面化したといえるが、他方ではまだ水面下でぐつぐつ燃えたぎっているような状態がつづいている。だがいずれにしても、若者の動きは世論に支えられ、草の根的な広がりをもつ勢力として盛り上がりをみせている。さらに彼らはお互いの壁を取り払って、より人間的で信頼に足る社会的権利を要求し始めている。
 ローマ・クラブは、こうした若者たちの理念を支持、「フォーラム・ヒューマナム」構想を打ち出した。若い青年男女の国際的ネットワークをとおして、名実ともの平和を愛する協調社会を築くためには、人間社会が将来に向けてどのような形で積極的な役割を果たしていかなければならないかを探ろうというねらいである。この若者たちの活動はきわめて将来性に富んだもので、八五年の国連国際青年の年には、なんらかの形で中間報告が発表されることになっている。
 われわれは人間関係を揺り動かす暴力を一掃しなければならないが、同時に人間の生命が最終的な拠りどころとする自然環境を破壊しかねない無意味な暴力行使にも、終止符を打たなければならない。このように考えると、われわれはまさに重大な転換点にさしかかっているともいえよう。
 地球上で自然と人間との共存関係を確立することは、人間関係における平和の確立と同様に第一の課題である。たとえ戦争の危機にとどまらず、他のあらゆる脅威や懸案が魔法のように消え去ったとしても、これは絶対に欠かすことのできない課題である。この自然との共存という課題を認識して初めて、これまでは達成できなかった人間社会の改善に向けて、われわれは新たな道を切り拓くことができるであろう。
 われわれはまず第一に、この惑星(地球)の状態がきわめて深刻であることを認識しなくてはならない。
 地球の現状は、枯渇と悪化に向けてひどい様相を示している。野生、自然の宝庫は消え失せ、砂漠化は進み、南洋の森林は急速に破壊されたし、なぎさや干潟は消滅し、無数の動植物の種が絶滅を強いられ、水質や土壌にとどまらず、毎日われわれが呼吸している大気も汚染され、自然の循環、気候、オゾンの層はしばしば回復不能なほどの影響をこうむった。
 生態系は度を越した収穫、放牧、漁獲の影響をもろに受け、さらに増大する一方の人間の需要によって重圧を加えられている。いまもそうだし、この生態系の危機はこれからもつづくであろう。

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