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日蓮大聖人・池田大作

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三、自然とのふれあい  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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1  三、自然とのふれあい
 池田 これも省エネルギーに関連することですが、先進諸国では快適さを求めて冷暖房の設備が普及し、非常な量のエネルギーが消費されています。日本の場合も、冬の寒さもさることながら、夏の高温多湿はたしかに仕事の能率を低下させます。このため各職場──オフィス、デパート、商店など──では、夏は必ずといってよいほど冷房を利かせています。それのみか電車やバス、自動車等の乗り物から各家庭にいたるまで、冷房が普及するようになりました。
 日本人の特性といわれる勤勉さが、暑い夏にも持続できるようにということから、このような冷房の普及になったものと思われます。しかし、こうした現象の結果、夏に風邪をひいたり、冷房のために病気になる人もいます。また、全体的にも、暑さ寒さへの身体の抵抗力が弱まっていることは事実です。
 この冷暖房が、有限のエネルギー資源である石油を大量に消費して行われていることは、言うまでもありません。したがって、石油資源の枯渇という事態が切実になれば、このような生き方は不可能になるでしょうが、この問題は、それだけでは片づけられないものを含んでいます。つまり、科学技術の力に依存する生き方が、人間の自然への抵抗力を著しく弱めているということです。
 資源枯渇の問題は別としても、自然との直接の触れ合いを避けるようなこうした現代人の生き方、現代文明のあり方に対しては、大いに改めるべき点があると思いますが、いかがでしょうか。
2  ペッチェイ 人間を他の動物から分け隔てているものは、知力です。この知力のおかげで、われわれの祖先は原初の昔から住居や道具や武器を考案し、それによって比較的快適に、そして安全に暮らすことができたのです。
 ところが現在、われわれは技術的にはるかに強力になったため、あらゆる面にわたって──建造や設備、軍備などを──おおげさにし始めてきています。このため、身体にはほとんど必要でないような、人工的な生息環境に住むことに慣れてしまったのですが、それが精神にはますますストレスを加えているのです。エアコン、エレベーター、自動車、自動制御装置等々、素晴らしい現代文明の利器はみなたしかに快適さと満足を与えてくれますが、その結果、われわれを自然環境に直接触れさせないようにしているのです。
 あなたが言われるように、もしわれわれが自然の挑戦や屋外の苦難から隔絶されつづけるとすれば、われわれは機敏さを失い、生物としての素資や耐久力が衰退することは、大いにありうることです。もしわれわれがなんらかの理由で、明日から、より自然的な生活に戻ることを強制されたとすれば、まったく当惑してしまうでしょう。現代人の中には、そうした生活に適している者はほとんどいないからです。
 あなたの見解によれば、いわゆる先進国に住むすべての人びとの生活様式に、適度の節制、あるいは厳しさを加味すべきであるとのことでした。それによって、現在のわれわれの存在が質的に高められるだけでなく、われわれ自身が道徳的・心理的・肉体的に鍛え直され、将来の人生に待ち受けるどのような気まぐれな変化や危険にも、よりよく対処できるようになるとのことですが、私もこれとまったく同じ意見です。

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