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日蓮大聖人・池田大作

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人間の圧力  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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1  人間の圧力
 生物圏(バイオスフェア)は、きっちりと織り込まれた生命体系であり、地球を取り囲む水と大気と土壌の薄い層に支えられています。この生物圏はきわめて傷つきやすいものであり、決して安心できる状態にはありません。経験と論理が示すところによれば、いま生物圏内で人間の圧力が増しているように、ある体系の中で一つの要素が加速度的に増加した場合、その体系が十分に強固であればそうした変則的要素を抑制することができますが、そうでないとその要素に圧倒され、たとえ破壊されないまでも変化させられてしまいます。人類は容赦なく人口を増大させ、経済を発展させていますが、これによって、人類自体がそうした危険で許容され難い要素になりつつあるのではないか、そしてこの地球上の本質的に有限で傷つきやすい生命体系を破壊もしくは変化させるという否定的で取り返しのつかない結果を生んでしまうのではないか、ということを最近になってやっとしぶしぶ自問するようになったのです。もし人類がそうした破壊的要素になる道を歩んでいるのであれば、まだ時間があるうちに自らの行動を自発的に改めなければなりません。そうしないと、われわれが地球全体に及ぼす災厄によって、われわれ自身が被害を蒙ることは避けられないでしょう。
 この点できわめて重要な問題は、生物圏への人間の干渉と、再生可能な資源──自力再生の傾向をもつ資源と、自力再生しつづけると安易に考えられている資源──の利用が、それらの資源の本来的な再生能力を超えていないかどうかということです。言い換えれば、この問題は、今日の数十億の人類があまりにも自らの技術・科学的、工業的熟達に酔い、あまりにも物質的福祉の魅惑にそそのかされているため、世界の生態系への干渉を、危険点を越えて拡大してしまうのではないかということです。
 今日、人類文明の拡大が地球上の生命体の織り地に与えた影響を否定する者はもはやいませんし、人間が生態系に加えた破壊、減退、操作が過去に起こったどんな出来事も矮小化してしまうほど巨大であることを否定する者もありません。しかし、いまや人類がこれらの体系をあまりにも攻撃しすぎたかもしれないという不気味な兆候がすでに十分あるにもかかわらず、こうした攻撃があまりに無謀なものになりつつあること、そして抑制の利く限度を超えつつあることを、敢えて公然と認めようとする人びとは非常に少ないのです。しかしながら、これこそがいま世界のいたるところで実際に毎日起こっている冷厳な事実なのだ、ということです。

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